◇ うたう名探偵
するとそこへ、乱歩さんと与謝野さんが入室してきた。
挨拶をして、私は鞄から1冊の小説を取り出す。以前、乱歩さんに借りたものだ。
「乱歩さん、この本難しかったけれど、面白かったです。」
礼を言いながら本を手渡す。
「これぐらいで難しいなんて、なまえもまだまだだね。
それと、一度教室へ戻った方がいい。」
「へ?」
思いがけない乱歩さんの言葉に、気の抜けた声が出てしまった。
「なまえの教室の前を通った時、カーテンが揺れていた。窓が開けっ放しなんじゃない。
君は日直だろう。そんな粗忽、国木田先生にどやされるよ。」
「え、なんで私が日直って」
確かに私は日直だった。吃驚して問い掛けると、乱歩さんは私の袖を指差した。
「…成る程。」
私の制服の袖には、薄くチョークの粉が付着していた。
板書を消した時に付着してしまったものだろう。
少し手で払ってから教室へ戻った。
2019.04.18*ruka
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*confeito*