横峯sideーーー





「石ヶ浦消防よりドクターヘリ要請です。石ヶ浦マリーナで船をクレーンで上架中、留め具が外れて船が落下。近くにいた30代女性、子供にぶつかったとのことです。」





【落ち着いてやればできるよ】

神崎先生が言ってくれた言葉を頭の中で反復する。





藍「患者情報入ってきてますか?」



「(無線)すいません。負傷者2名とお伝えしましたがもう1名いました。母親と7歳の女の子、4歳の女の子姉妹のようです。やはり船にぶつかったようで上のお子さんは腹痛を訴えてます。下のお子さんは意識レベルほぼクリア、呼吸は安定しています。」



藍「了解しました。患者が3人に増えた。3人任せる」



横「えっ?」



藍「いい機会だ。お前一人で3人全員をどうにかしろ。フライトドクターはお前だ。俺はただの付き添い。お前の指示に従う。」





え、どうしよう…。
患者が3人に増えた…。
どうすればいいの?










「案内します!」





ホント、どうすればいい…
もう、現場ついちゃったし…

落ち着いて、私…





「痛い、痛い…」



横「聞こえますか?お名前は?」



「痛い…」



横「失礼します。腹部に圧痛。胸部、骨盤には異常ありません。バイタルもう一度測ってください。






横峯です。」



冴「心配しなくていいからね。」



藍「お願いします。」





母親も大したことありませんように。下の子は意識レベルクリアって言ってたし…。





横「翔北救命センターの横峯です。どこか、つらいところありますか?」



母「私は大丈夫です。娘たちの方を…。」



横「失礼します。



バイタル異常ありません。」





バタン!





横「大丈夫!!」



母「さやか!」



横「さやかちゃん?



意識レベル悪いです!」



藍「それで?」





それで……。
え、どうすればいいの?
藍沢先生はなんで何も言ってくれないの??










現場で負傷者が増えたときは……
【搬送の順番を決めるの。】



藍「まずは、順番を決めろ。」





神崎先生の言った言葉を思い出したと同時に藍沢先生が同じことを言った。





横「まずは、この子をヘリで翔北に運びます。Touch・and・Goでピストンして7歳の子もうちに。その間にお母さんは救急車で近くの病院に運びます。」



藍「悪くない。ただ、7歳と4歳だ。親と一緒の方が良いだろう。白石にベッドの空きを確認して母親も翔北に搬送してやれ。」



横「わかりました!」





白石先生に確認して了解を得て、まずは4歳をヘリで搬送した。

Touch・and・Goで7歳をヘリで搬送するときだった。




あれ…。
上手く喚起ができてない…。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





どうしていいのか分からなくなって、藍沢先生に無線を入れた。
こうなったら、藍沢先生に怒鳴られたっていい。





横「藍沢先生…。」



藍「(無線)なんだ。」



横「なんか、さっきから上手く喚起が…。」



藍「(無線)ちゃんと言え。」



横「上手く喚起ができません。」



藍「(無線)皮下気腫は?」



横「……あります。」



藍「(無線)おそらく緊張性気胸だ。今すぐ脱気だ。そこで胸腔ドレーン入れろ。





どうしよう。
胸腔ドレーン上手くできないよ……。





藍「どうした?……すぐに治療を開始しろ。数分で死ぬ。」



横「はい…。でも…、でも、上手くできなかったら…。」



藍「練習したんだろ。神崎に教えてもらいながら、何度も練習したのは何のためだ。患者を救いたくてやってたんじゃないのか?








お前は医者だ。目の前の7歳の少女の命を救え。」



横「わかりました。やります。」






そうだ。
神崎先生と練習したんだ。
何度も何度も…。

患者さんを助けるために。