藍「翔北につないでください。」
翔北につなぐと電話に出たのは神崎だった。
藍「神崎、聞こえるか?」
『聞こえるよ。どうかした?』
藍「横峯、フォローしてやってくれ。緊張性気胸だ。こっちは今、手が離せない。」
『わかった。』
藍沢からの電話を切り、CSに入り横峯に無線を入れる神崎。
『(無線)横峯、聞こえる?』
横「はい。」
『(無線)上肢は挙上してあるね?』
横「できてます。」
『(無線)麻酔はしなくていい。すぐに切開して。』
横峯はメスで切開し、次の器具を冴島に要求する。
横「ペアンください。」
『(無線)教えたこと、声に出しながらやってみな?』
横「はい。…胸膜まで大きく開いて……、ペアンの先で胸膜を破る…。」
『(無線)そう。それで脱気ができるはず。』
横峯は、脱気できているか耳を当てるも、脱気した時の空気の抜ける音が聞こえなかった。
横「脱気の音が聞こえません…」
『(無線)ヘリの中だから聞こえなくていい。バッグ揉んでみて?』
冴島がバッグを揉むと、先ほどまでの抵抗もなく軽くなったことを神崎に伝えた。
横「チェストチューブ入れます。」
『(無線)肺を傷つけないようにゆっくりね。大丈夫、ここまで来たんだから。チューブが曇ったら正しい位置に入ってる。』
横峯がゆっくりとチューブを進めると、チューブ内が曇った。
横「曇りました。」
冴「Spo2、95まで戻りました。」
『成功。チューブが抜けないように注意して。ヘリポートでまってるよ、あかり。』
名前で呼ばれた横峯は嬉しそうな表情をしていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そのころ、緋山と名取は17歳の妊婦・望海の今後について本人と父親を交えて話し合っていた。
勉「お前みたいに馬鹿で未熟な人間が子どもを育てられるわけないって言ってるんだ。」
望「はぁ?できるっしょ。あんたに出来たんだからさ!」
バシン!
勉は望海の頭を叩いた。
望「何すんのよ!」
名「あぁ…ちょっと…。妊婦さんですから。」
名取は2人の間に入り必死に止めた。
望「マジ、ムカつく。言うこと聞かせたいだけじゃん。」
勉「うるさい!」
緋「すいません。意地の張り合いはやめませんか?今は冷静に望海さんの妊娠と向き合って、これからのことをきちんと話し合うべきです。」
2人の様子をみて堪らず声をかける緋山。
勉「そうですね。
…相手の男とはどうなってる?結婚するのか?」
望「私が……好きだっただけだし…」
勉「ホントに、馬鹿だな。
望海、お前、一人で子供育てるってことがどういうことか本当に分かってるのか?誰も代わりがいないんだぞ。当然、赤ん坊の時は一時も目が離せない。保育園に預けられるようになったって夜遅くに帰るわけにはいかないから、できる仕事も限られる。誘われても断ってばっかになるから友達もいなくなる。趣味なんてやる余裕も金もない。それでいつの間にか時間が過ぎてて…。気づいたら17年たってるんだ。」
望海は、自分が馬鹿にしていた、定時できっちり帰ってくる趣味も女も友達もいない父親の理由を理解しはじめ、黙って父親の話を聞いている。
勉「考えてみろ。同級生がみんな洋服だ、合コンだって楽しんでるときに毎日オムツ替えたり、熱だ、下痢だ、予防接種だって病院に行くことになるんだぞ。お前まだ、17だろ。17歳は17歳の時にしかできないことをしろ。いいんだよ。ふらふらして、好きなやつと恋愛したっていいんだ。」
望「お父さんは、後悔しているの?」
勉「いや…。後悔したことは一度もない。お前といてずっと幸せだったよ。」
望「お父さん…。私、やっぱり産みたい。」
17歳の決断に父親も緋山も納得した表情を見せていた。
望「ねぇ、このお尻可愛くない?」
名「それ、頭だから。」
望「え、嘘!?え、待って…。」
話し合いが終わり、望海は名取に車いすを押されベッドへ戻っていく。