「……傷、目立たなくなってきたな」
「あ、やっぱりそうですか?」
通り魔事件から暫く経ったある日。服を脱いでタンクトップになり、刺されたところを秀一さんに見せる。そこには傷痕こそはあるもののもうあまり目立たない。ただ、完璧に消えることはないだろうけれど。
「呉羽、」
低い声で、秀一さんが私の名前を呼ぶ。怒ってるわけじゃない。低いけれど、優しい甘やかすときの呼び方。そのまま秀一さんの傍に行くのも気が引けて、脱いでいた服を手に取ろうと服に手を伸ばす。が、それよりも早く秀一さんが私を引き寄せて抱き寄せられた。
「そのままでいい」
「さすがにちょっと恥ずかしいんですけど…」
「俺しか見てないだろう」
秀一さんの腕の中にいる私の恰好は下はちゃんと履いているけれど上はタンクトップ一枚である。もちろんその下に下着はしているけれど、それ以外の服は傷を見せるのに脱いだ状態だ。秀一さんはその状況をむしろ楽しむように首筋に顔を埋める。
「……呉羽」
私の存在を確認するように、秀一さんが私の名前を呼ぶ。腕の中で私が小さく身じろげば、秀一さんは少しだけ笑って顔を上げた。少しだけ口角を上げた顔。その顔に、ドキリと胸が高鳴る。
秀一さんが私の名前をもう一度呼んで、額にキスをする。慣れた手つきで触れるソレは、頬や唇へと移動して私は思わず秀一さんの服を握る。
「そんなに、身構えるな」
秀一さんが口角を上げながら耳元で囁くように言った。ちゅ、と音を立てながら耳元にキスをして、肩へと移動していく。そのまま下へと移動して、少しだけ残る傷痕へと触れた。
「少しは、残るかもしれんな」
「傷痕ですか?」
「あぁ。女なんだから、気になるだろう」
傷口に触れていた唇が離されて、抱き寄せられる。私が服を掴んでいた手を離して秀一さんの背中へと腕を回せば、秀一さんは少しだけ驚いたように私を見る。
「傷ぐらい、残ってもいいですよ」
「気にしないのか、」
「秀一さんが、貰ってくれるんでしょう?」
ぎゅっと抱きつきながら顔を上げれば、秀一さんは驚いたようにマジマジと私を見た。けれど、フッ、と笑って私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「あぁ、貰ってやるさ。嫌って言っても、聞かないからな」
「秀一さんこそ、嫌って言っても嫁ぎますからね?」
私の頭を撫でていた手が止まって、また私を抱きしめる。隙間を埋めるように、強く。頬を緩ませながら甘えるように寄りかかると秀一さんは私の名前を呼んで。反射的に顔をあげたら、口角を上げた秀一さんの顔。ゆっくりと近付いて来るソレに、私は委ねるように瞼を閉じた。
2016.01.14
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