Marguerite

特定の本を探す

 
「うわっ、本降りになってきた!!」
「やむかなぁ…」

外は結構激しく雨が降り始めていた。一応折りたたみ傘は鞄に入れてあるけれど、折りたたみ傘だと小さいのが少し不安かもしれない。

「大丈夫ですよ!天気予報だとにわか雨だろうと言ってましたし…」
「じゃあ、通り過ぎてしまえば大丈夫ですかね」
「えぇ。多分すぐやみますよ」

雨が降り始めた、ということはこの幽霊騒動も動き始めるだろう。事前にこの事件を思い出して内容を整理出来ていればよかったのだけれど、完全に忘れていたからそんなことはしていない。幸いなことに人が死ぬような事件ではないし、行き当たりばったりで思い出していくしかないだろう。

「でも、生徒のお化け調査に付き合っちゃうなんて…相変わらずお人好しだねぇ新出先生…」
「え、えぇ…」

塚本先輩が、振り返りながら新出先生に言った。戸惑いながら返事をする彼は、ベルモットが変装していたときに起きたことを知らないので仕方がないことだろうか。

「あら世古君!どこにいたの?探してたのよ!」
「ああ…腹の調子が悪くてな…。午後の授業を休んで保健室で横になっていたんだ…」

トイレから出て来た男子生徒に、塚本先輩が話しかける。新出先生が大丈夫か尋ねると、彼は大丈夫らしく塚本先輩に何の用かを尋ねる。が、塚本先輩は大した用じゃないらしくまた今度にするということだ。
彼は保健室に戻り際に、少し休んでから帰るとのことだ。心配症な先生に病院に連れて行かれる前に、と。

「もしかして、今の人も保坂って人とクラスメートだったとか?」
「いや、クラスは別!保坂君とは幼なじみだったそうだけど…」

幼なじみ。そういえばそうだっけ。
結構忘れているものだな、と物語が目の前で進むのを眺めながら図書室へ向かった。

 + + +

「朝来たら本が出しっぱなしになっていたんですか…」
「ええ…。それも前に保坂君が借りた事のある本ばかりね…」
「それも四日連続よ、四日連続!!どー考えても読み返す事ができなくなった保坂って人の恨みだと思わない!?」

図書室に着いて、入り口で固まって話す。その中で、鈴木さんの図書室には似つかわしくない大声に毛利さんと塚本先輩が人差し指に手を当てて静かにするように促す。

「でも、本が出てたら、図書委員の人が鍵掛ける時に気づくと思うけど…」
「それが、四冊とも本棚の陰とか机の下とかに置いてあったらしくて…」
「まあ、幽霊騒ぎに便乗した誰かのイタズラだとは思うけど…」

鍵を締める前なのだから多少面倒でもそういうイタズラをされていないか確認するのも仕事ではないだろうか、と思ったけれどここでそれを言っても意味は無い。それよりも、だ。

「保坂先輩が借りた事がある本、ね…」
「何か気になるのか?」
「いや…。コレだけ本がある図書室で保坂先輩が借りたことがあるのって便乗したイタズラなら大変だよなぁって」

かなりの量がある本の一冊一冊をわざわざ貸出カードを確認するとも考えにくい。となるとやっぱり犯人はかなり絞られてくるのではないだろうか。
どうやら塚本先輩はイタズラをした人をボコにするつもりらしいけれど、毛利さんの顔は若干引きつっている。もし仮にコレが幽霊の仕業だったのなら、彼女は手を出したくないのだろう。

(そもそも幽霊に物理って効果あるのかな…)

塩とかの方が、効果はありそうだけれども。次のところへ行こうか、という鈴木さんの声に、私は考えることをやめた。

2016.02.12
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