Marguerite

美術室前の階段

 
「さてと…最後はこの呪いの階段」

美術室前の階段下に集まって、階段を見上げる。どうやら私達がいるこの場所が、水浸しになっていたらしい。鈴木さんは保坂先輩の呪いの涙では、という話をするけれど、コナン君は冷静に窓がちゃんと閉まって無かったんじゃない、と言えば彼女は窓ぐらい閉めてたわよ、と返した。こうしてみると、年の離れた姉弟の喧嘩に見えるのは私だけだろうか。

「じゃあ、三人で数えてみれば?」
「え?」
「私も?」
「い、いいわよ、数えてやろーじゃないの!」

売られた喧嘩は買う、とでも言うように鈴木さんが答える。完全に下で待ってるつもりだった私も階段を数える人数にカウントされているらしく、じゃあ三人で数えようか、という雰囲気だ。

「じゃあ、数えようか」

三人並んで階段に立って、一段一段数えながら階段を上がっていく。ゆっくりと慎重に数えて、一番上まで来たところで鈴木さんが私と毛利さんに階段の段数を尋ねた。

「わたし12段…」
「私も12段ね」
「え〜〜!こっちは13段よ!!」
「うそ〜〜〜!どーして!?」

三人で数えさせたのはそういうことか、と少し納得をする。多分コナン君は鈴木さんが一段余分に数えることを予想していたのではないだろうか。
私がそう思っていると、下からコナン君が両足を揃えたときに一回余分に数えたんだ、と言う。…毛利さんも怖いとは思っているだろうけれど、キッチリ数えられている辺り意外と冷静になれているのだろうか。

「わかったわよ!もう一度ちゃんと数えればいいんでしょ?」
「あんまり大きい声だすと…」
「おい君達、静かにしてくれないか!?絵に集中できないだろ!?」
「す、すみません…」

やっぱりそうだったか、と小さく息を吐く。新出先生が私達の代わりに謝罪をすると、ピシャ、と美術室の扉は閉められる。鈴木さんも少し申し訳無さそうに頭を下げて、続けるように視線が一瞬だけ合ったので私も下げた。

「それにしても、篠宮さん怖くないの?」
「まぁ、一応私見たことしか信じないようにしてるから」
「現実的なんだね…」

羨ましいな、と小さく言う毛利さん。その言葉に、思わず私はクスリと笑う。

「全然現実的じゃないよ。ずっと、大人になれる青いキャンディが欲しいって思ってるから」
「青いキャンディ…?」
「物語の中でね、出てくるの。若返る赤いキャンディと大人になれる青いキャンディ」

コナン君は知ってる?なんて少しだけわざとらしく聞いてみれば顔を引きつらせながら僕知らないや、と答えた。薬じゃなくてキャンディなんだけどさすがにここに縮んだ例があるだけに素直に笑えないのかもしれない。

「あら!雨やんだみたい…」
「じゃあ、とりあえず今日は帰る?」
「そ、そうね…」

少し安心したように言う毛利さんに、やっぱり少しは怖かったのか、と安心する。ただ、毛利さんの言葉は途中で止まって、中庭を指差す。そこにあるのは、机と椅子。私がそれを確認した瞬間、コナン君が走り始める。ここにいようか、とも思ったけれど私はコナン君を追いかけて中庭へと向かった。後ろからは、新出先生が走ってくるのが分かった。
中庭へと出て、机の傍へと走り寄る。そこには、紙と紙が落ちないように石が置かれていた。

「我が恨み…未だ消えず…」
「い、一体誰がこんなイタズラを!?紙は濡れてないから、雨が止んでからここへ運んだんだろうけど…」
「だとしたらおかしいよ……」
「土は雨でぬかるんでいるんです。なきゃいけない物がここにはない」
「あぁ。この机をここに運んだ…犯人の足跡が…」

コナン君が、来た道を振り返る。そこには、コナン君と私、そして新出先生。三人分の足跡しかなかった。

2016.02.21
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