「や、やっぱり…やっぱりあの中庭の机とイスって、体育倉庫に置いてあったヤツだったのね!!」
「うん!二年前にこの高校でなくなった保坂英影って生徒の机とイスに間違いないよ!机の右下に同じサインが書いてあったから…」
校舎に戻って、その机が誰のものだったのかをコナン君が2人に伝える。中庭に置かれた机は、確かにさっき体育倉庫で見た机に書かれていたサインと全く同じで、あのサインを書いた本人がいない以上、アレは保坂先輩の机とイスになるということだ。
誰かがイタズラで?と毛利さんが新出先生に尋ねれば、恐らく雨が止んだ後中庭に運んだんだと思うとのことだ。ただ、足跡はあのとき中庭に走っていった三人分の足跡しかなかったのだけれど。
「ゆ、幽霊よ!!!きっと保坂って生徒の霊が運んだのよォォォォ!!!」
「ハハ…」
「あ、ありうるわね…。幽霊には足がないし…」
「毛利さん、多分足も無いけど物を触るのも無理だと思う…」
本気で幽霊と考えていく辺り、彼女は幽霊が苦手なわりにいっそ幽霊騒動にしてしまいたいのだろうか。コナン君と私で呆れたように毛利さんを見ていると、鈴木さんが中庭に視線を移して声を上げた。
「その机とイス、なくなってるわよォ!!」
「ウソ!どーして!?」
「呉羽姉ちゃんと新出先生が元の体育倉庫に戻したんだよ!」
「騒ぎになると思うツボですし、机の上の紙には妙な事が書いてありましたしね…」
「それに、騒ぎにならないとしてもまた雨が降り始めて紙が濡れてもいけないだろうし…」
あまり幽霊騒動だと思っていないコナン君と新出先生、私の三人が彼女らに言う。新出先生が言った妙なこと、というのが気になったのか、毛利さんが尋ねれば新出先生がソレに答える。筆で書きなぐったような字で、『我が恨み…未だ消えず』と書かれていたと。
「じゃ、じゃあ紙が濡れてなかったのは…」
「雨の中、その霊が机に覆いかぶさってその恨み文を書いてたから…」
(幽霊なんだから雨もすり抜けるんじゃあ…)
どうしてそうも幽霊と結びつけるのか。苦笑いをして彼女らを見ていると、美術室から突然悲鳴が聞こえてきた。開けていいものか、とちらりと新出先生を見れば私の視線に気付いたらしく、新出先生が美術室の扉を開けた。
「ど、どうかしましたか?」
「や、やっぱりアイツ恨んでいたんだ…。この幽霊騒ぎはやっぱりアイツの…保坂の呪いだったんだあああ!!!」
頭を抱えるようにして、キャンバスの前に座っていた先輩が叫ぶように言った。コナン君がその先輩に保坂先輩のことを知っているのか、と尋ねれば同じ美術部員だった、ということだ。二年前、保坂先輩が階段から落ちるまでは。
「あの時って…」
「まさかその場にいたとか?」
毛利さんと鈴木さんが聞きにくそうに尋ねるけれども、彼は何も言うことはなく黙っている。私が新出先生を見ればどうやら新出先生は彼を知っているらしく、顔色の悪い先輩を見ていた。
「出て行ってくれないか…」
「え?」
「コンクールに間に合うように、先生が気を使ってこの美術室に一人でこもらせてくれているんだ…」
最後には怒鳴り散らすようにして、私達を外へと出した。同じ美術部員だった人がこんな騒ぎになっていれば、メンタル削られるのは仕方がないだろう。
私が小さく息を吐いていると、コナン君が美術室の扉の隣にある消火器の前に座り込んでいた。
「それ、もしかしてロウ…?」
「多分な…。階段の下が水浸しになってたって言ってたけど、この床か?」
「確かここだったと思うよ。床一面に広がってたって」
「見つけたの、誰だったか覚えてるか?」
「美術部員の誰かだったけど…ゴメン、詳しくは」
「ふーん…」
立ち上がっても、コナン君は気にするようにその床を見ている。確か、ロウで水を弾かせてたんだっけ…?曖昧な記憶を思い出しながら、毛利さんたちの後に続いた。
2016.02.24
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