Marguerite

年上の恋人

 
腕に感じる痛みで目を開ければ、目の前にジト目のコナン君がいた。コナン君が鈴木さんを驚かすようなことを言った後辺りから、私の中の記憶が無い。

「……この野郎」

小さく呟いて、コナン君を見る。コナン君は苦笑いをしながら悪かったって、と言ったので私の予想は当たった、ということだろう。

「あ、ひとつ聞きたいんだけど」
「何だよ?」
「私パンツ丸出しみたいなことになってないよね……?」

原作では鈴木さんが眠ったときにパンツ丸出しになっていた。不可抗力とはいえ同性であろうと異性であろうと見られたくはない。

「別になってねぇけど……なる予定でもあったのかよ?」
「あったらただの痴女じゃない。スカート短いから、もしかしたら程度の話!」

私とコナン君がそんな話をしていると、毛利さんからそろそろ帰ろうか、と声をかけられる。外を見れば、もう真っ暗だ。

「それにしても篠宮さん、推理してるときうちのお父さんみたいだったよ」
「そうそう!おじさまみたいだったよね。あっ、ねぇ!呉羽って呼んでもいい?」
「あ、私も!」
「お好きにどうぞ……」

どうしよう私女子高生のノリについていけない。若いって凄いな、と思いながら苦笑いをしながら下駄箱へと向かう。

「にしてもまさか呉羽があんなにスラスラ推理していくとは思わなかったわ…。もしかして探偵やってるの?ハロウィンパーティーでも服部君と一緒にいたでしょ?」
「自ら探偵を名乗ったことは無いよ。目立つの好きじゃないし…。工藤君の影響はあるかもしれないけどね」
「そういえば呉羽って新一と仲よかったよね」
「あ、そういう関係じゃないよ。私一応だけど恋人いるし…」
「えっ、何よそれ!?早く言いなさいよ!」

あ、選択肢間違えた。詰め寄ってくる鈴木さんを見て、ちょっと思ってしまった。年頃の女の子にそういう話は良くないのか。鈴木さんが、そういうことに興味津々なだけかもしれないけれど。

「呉羽の恋人ってどんな人なの?」
「えっと……年上?」
「何で疑問形なのよ」
「いや、なんとなく…。年上で、優しい人だよ。私には勿体無いぐらい」

未だに、どうして赤井さんが私の手を取ったのかが分からないときがある。愛されている自覚はあるけれど、私のどこを好きになったのかと考えると不思議なものだ。まぁ、秀一さんには全部って答えられたのだけれども。

「でも、年上かぁ…。いくつぐらい上なのよ?大学生?」
「えー…。働いてるけど…」
「社会人なの!?相手いくつよ!?」
「あー……うん。余裕で20は超えて…っ!」

そこまで言って、慌てて口を塞ぐ。そういえば、ちょっと忘れていたけれど新出先生がいた。別に生徒が社会人と付き合っているからどうこうという話はないだろうけれど、教師にこういうことが知られるのはどうなのだろうか。成人した人間が未成年に手を出すのは、場合によっては犯罪だ。する予定はないけれど、私がもし仮に訴えれば秀一さんが圧倒的に不利だ。

「あの、先生…。出来ればこのこと誰にも…」
「あぁ、大丈夫ですよ。生徒の恋愛にどうこう言うつもりはないですから」
「いや…うん。一応…。年齢のこともありますし」
「あぁ……。でも、警戒するに越したことはないかもしれませんね」

苦笑いをする新出先生に、私も同じように苦笑いをする。私もだけれど秀一さんも年齢のことは気にしてるから、正直二人のときはこういう話題を出せないのが悩みどころだ。私が20を超えてしまえば、ちょっと離れてるね、というぐらいで済むのだろうけれど。

「あ、そっか。呉羽が早く大人になりたいって言ってたの…」
「年齢差、やっぱり気になるからね」

あまり私の話ばっかりしてもアレだから、2人はどうなの、と尋ねれば2人は別に少し慌てたように私のことはいいの、と返されてしまった。高校生なら制服デートだって出来るだろうに勿体無い。

「…あ」
「え、どうしたの?」
「携帯鳴った。あー…ゴメン、私迎えきたみたい」
「ホント?車?」
「多分。ごめんね、また学校で」

震える携帯を手に、別れを告げる。さっき秀一さんと電話をしてからもうそれなりの時間が経っているから気になって電話をしてきたのだろう。小走りで昇降口に向かって、急いで門へと向かった。

2016.03.08
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