Marguerite

デートのお誘い

 
「秀一さん、おまたせしました」

門に立っていた秀一さんに、声をかける。秀一さんは私の姿を見るとフッ、と笑って手に持っていた携帯電話を閉じた。同時に、私の携帯の震えが収まる。

「何かあったのか?」
「うーん…幽霊騒動?」
「……どうせ誰かが仕組んだことだろう」
「わぁ鋭い」

呆れたように言う秀一さんに、思わず笑みを浮かべる。秀一さんとコナン君がコンビを組み始めるのは、もう少し先だっただろうか。
私がそんなことを考えていると、秀一さんが私の手を取って引き寄せる。

「その幽霊騒動とやらは、男も一緒か?」
「先生はいたけど…。あ、あと初めましての先輩とか。小学生とか」
「……まぁ、大丈夫な範囲だな」
「心配しなくても、私は秀一さん一筋ですよ?」
「あぁ、知ってる」

口角を上げた秀一さんの唇が、私の額に触れる。手が頬に触れて、瞼にもキスをされる。秀一さんからのキスは嬉しいのだけれど、ここは外だ。それも、校門のすぐ近く。

「ここ、外なんですけど…」
「嫌か、」
「せめて家に帰ってからとか…。されるのは、好きですし」
「それは、家に帰ってからなら我慢しなくていいということか?」
「そこまでは言ってません!」

さり気なく腰を引き寄せる腕を軽く叩いて、離れる。秀一さんもそうされるのを分かっていたのだろうか。アッサリと腕を離して手を繋ぐ。

「何か、食べたいものはあるか?」
「特に何も考えてなかったんですよねぇ…。あ、今何時ですか?」
「19時半を過ぎたとこだな。大体どこの店も開いていると思うが…」

秀一さんに言われた時間を復唱して、とある場所を思い出す。前から行ってみたかったけれど一人で行くのは嫌だし、だからといって秀一さんを誘うのも気が引けて行けなかった場所。

「この後お仕事とか、ないですよね…?」
「あぁ。特に無いが……」
「行きたいとこ、あるんですけど…」
「別にそれはいいが…」

遠いのか、と聞かれて首を横に振る。遠くはないけれど、場所が場所だ。あまり人混みを好まない秀一さん的にはどうなのだろうか。
小さく目的地を告げれば、そういえば今は夜もしていたな、と納得したように秀一さんが言う。むしろその情報を知っていたことに驚きなのだけれど気にしないことにしておく。

「秀一さん人混みとか得意じゃないからどうかなって思ったんですけど…」
「たまにはいいさ。行きたいんだろう?」
「まぁ…。どうせ、なら」

少し甘えるように手を繋いでない方の手で秀一さんの服を掴めば、彼がフッと笑う。そのまま手を引かれて、秀一さんの胸元へとダイブする。

「えっ……秀一、さん?んんっ…」

驚いて私が秀一さんを見上げると、そのまま口を塞がれる。目を閉じることさえ忘れて視界いっぱいに広がる秀一さんを見ていれば、唇を離した秀一さんと視線が交わる。

「お前は、もう少し甘えてくれ」
「十分、甘えて、ますけど…」
「呉羽の甘えは、少なすぎるんだ」

くしゃくしゃと頭を撫でられて、思わず頬を緩める。行くか、と言いながら手を引かれて、私は秀一さんに並ぶようにして歩き始めた。

2016.03.15
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