Marguerite

穴があるなら入りたい

 
携帯電話から鳴り響く電子音に、目を覚ます。携帯のアラームを止めて、特に異常の無い身体を起こす。前日に飲んでいたわりに二日酔いが無いのが悲しい所である。

(………出来ることなら前日に戻りたい)

それは、どうあがいても叶わないのだけれども。お酒が入るとどうにも人に甘えっぽくなってしまうのは如何なものか。いっそ記憶でも飛んでしまえば楽なのに悲しいぐらいにバッチリ記憶が残っている。

「気分はいいか?」

突然聞こえてきた声。部屋の入り口でこちらを見ながら微笑を浮かべる彼は、果たして私に記憶があると知っているのだろうか。

「二日酔いとかは、ない、ですね」

どうにも視線を合わせにくくて。しどろもどろに答えれば、秀一さんがまたフッと笑うのが分かった。

「その様子だと、記憶はあるらしいな」
「出来ることならデリートしたいですね」

間髪入れずに答えれば、呆れたように小さく息を吐いた秀一さんが私に近付く。我ながらささやかな抵抗だとは思いつつ後ずさるも、所詮はベッドの上。壁に背中が付くまでは早かった。

「なかなか可愛らしかったとは思うが」
「今すぐ忘れて下さいっていうか忘れろ下さい」

ギシリ、と秀一さんが乗ったことによりベッドが軋む。赤くなった顔を隠すために顔を両手で覆うけれど、秀一さんがフッ、と笑いながら私の両腕を掴んで覆っていた手を取られる。

「呉羽、」
「や、秀っ…」

熱っぽく名前を呼ばれてイヤイヤと首を横に振るも、顔を近付けられて口付けられる。開いた口から簡単に舌を絡めとられて、逃げるなと言わんばかりに後頭部を抑えられる。
数回角度を変えて口付けられて、秀一さんが離れたときにはまた秀一さんが口角を上げていた。

「たまには、あれぐらい甘えろ」

まるで小さな子どもに言い聞かせるように抱き寄せて耳元で囁く。ただ私からすれば昨日のアレは中々に恥ずかしくて。とりあえず秀一さんに抱きついて頭をぐりぐりと押し付けておく。

「絶対秀一さんの前ではお酒飲まない……」
「ホー……」

あ、やばい。地雷踏んだかも。そう思うのと同時に、秀一さんは私の顔を持ち上げる。

「っ、ん……ぁ」

再度後頭部を抑えつけれられて、逃げられないように固定される。腕で押してみるも、慣れたように腕を取って手に指を絡められる。

「ゃ、んぅ……ぁ、」

さっきよりも長く、激しくされるソレを受け入れながら、どちらのとも言えない唾液がこぼれ落ちる。離されたと思ってもまた角度を変えて求められて。

(悪い気は、しないけどっ…!)

朝からこういうことをされるのは、刺激が強すぎる。

「ん……っあ…」

どれほどそうしていたのだろうか。
ようやく離されたと思うのと同時に、抱き上げられる。急な浮遊感に秀一さんに抱きつけば、またフッと笑って今度は額へと口付ける。

「朝ごはん、食べるだろう?」
「食べます……」

あんなキスをされて平静何か保てなくて。顔を隠すためにもっと強く抱きついた。

2015.03.22
 
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