*同期の女性視点
「アンタ、バカじゃないの?」
「…お前よりかはマシだと思うぞ」
「うるさい」
事務所の廊下にある自販機の前。バシリ、と持っていたファイルで同期の頭を殴る。ジョディと付き合ってて仕事で組織に潜入するために『二人の女を同時に愛せるほど器用じゃない』とか何とか言って別れて、その組織の女の子とまぁ本当に好きだったのか仕事のつもりしかなかったのかは分からないけど付き合ってて死に別れて、今のコはどうやら未成年らしい。ロリコンかコイツは。
(っていうか何でコレがモテるんだろう……)
若いコにテレビでキャーキャー言われているような感じのイケメンでもないし、ぶっちゃけ独占欲とか滅茶苦茶強そうだしそもそもコイツ生きてる人間の顔をしていない。何故コレがモテるのか。
「何か言いたそうな顔だな」
「何でアンタがモテるのかを真剣に考えている」
「……モテてるつもりはない」
「未成年に手を出した人に言われても説得力無いわー」
未成年なことを主張して言えば、彼はより眉間にシワを寄せる。どうやら相手が未成年ということは本人も気にしているらしい。うん、コレは地雷だっただろうか。まぁ最悪逃げればいいか、と気楽に考えることにしておく。
「彼女の写真とか無いの?」
「無いしあってもお前には見せん」
「ケチな男は嫌われるわよ」
「ノンケでも食うような痴女に見せられるか」
「ちょっと表出ろお前」
何真顔で語弊のあることを言っているんだコイツは。私はノンケの女の子をノンケじゃないようにして食べているだけだ、ノンケは食べていない。そして女の子ばっかりを食べているつもりはない。
コーヒーを飲む彼を睨んでも、平然としていることにイラついたのでとりあえず足を踏んでおく。踏み返されたけど。
「っていうか、彼女いくつだっけ?」
「17、18だな」
「うっわー犯罪。でも青春よねぇ。バレンタインには手作りでも貰ったの?それともあげたの?」
「……いや、ここ暫く会ってないな」
「はぁ!?」
コイツは彼女をなんだと思っているんだ。バカか、バカなのか。女心の分からない朴念仁め。
「仕事が忙しいのと、もともとホテルに泊まったり家に行ったりだったからな」
「馬鹿か貴様は」
そこに座れ、といって自販機の隣の椅子に座らせる。うん、こうでもしないとコイツを見下ろすことは出来ない身長差が悲しいわ。
素直に椅子に座った赤井の前に立って腕を組んで彼を見下ろす。最も、赤井の方は呆れ顔なのだが。
「ホント女心の分からん朴念仁だなお前は。赤井の彼女がどんな性格なのかは知らないけど、高校生なら恋したいざかりだろ。それに、女ならイベントが嫌いなのは少ない。絶対作ってるぞ、当日に、お前に渡すつもりで」
「ホー…」
「彼女だって仕事が忙しいの知ってるんなら、自分からいつ来るかなんて聞けないだろ。多分今頃自分で食べてるぞ。人にあげるために作ったものを自分で食べるっていうのは、結構悲しいもんあるからな」
「そういうものか」
「そういうものだ」
赤井が、何かを考え込むような仕草をする。どうにもこの朴念仁、女心というものとは分かり合えないらしい。しかし何故コレがモテる。コイツの彼女に会ったらどこが良かったのを訊きたい、真剣に。
「仕事が気になるんなら引き受けるよ。どうせ私予定ないし。というか今すぐ行け。私が許す」
「そういう問題じゃないだろう」
「全責任は私が取る。赤井の為じゃないし。彼女さんがあまりにも不憫だからだっての」
別に今流行りとかなんとか言われているツンデレとかではない。マジで彼女が不憫だからだ。相手を想いながら作ったのにこの朴念仁が会いに行かなくて自分で食べるという悲しいことは生み出したくはない。女の子は愛でられるべきものなんだ。
「ホラ、彼女待ってんだからさっさと行く」
「せめて机の上を片付けさせろ」
「じゃあ机の上片付けて、私が出来る仕事は私の机の上に置いて帰れ」
もう既に外は日が暮れている。多分事務所もそんなに人がいないはずだ。赤井が消えたところでどうこう言う人間もいないだろう。隈酷いから帰らせたとでも言っておこう。
「……悪いな」
「そう思うんなら彼女に尽くせ朴念仁」
立ち上がって早々に事務所に戻る赤井を見送って、冷めたコーヒーを流し込んだ。
2015.03.04
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