ごろり、と何度目か分からない寝返りをうって、軽く背伸びをする。いっそ1度ベッドから出て目を覚ました方が、寝れるだろうか。幸か不幸か、隣で眠る秀一さんは今日は私に抱きついていない。軽く秀一さんに向けて手を伸ばして頬に触れる。それと同時に、腰を引かれた。
「寝れないのか……?」
「あ…ごめんなさい、起こしました?」
「構わん。どうせ眠りは浅い」
私のことを抱き寄せて、腕枕をする。頭を撫でられて頬を緩ませれば、暗闇の中で秀一さんも少しだけ笑みを浮かべた。
「心臓の音を、聞くといいと言うだろう」
「そういえば、言いますね」
「聞いていろ。目を閉じて、心音を聞いていたら…自然に眠れる」
私の頭を撫でる秀一さんは少しだけ眠そうで。起こして申し訳なかったな、と思いつつ秀一さんの言葉に甘えて彼の胸元に顔を埋める。耳を澄ませば秀一さんの心臓の音だけが聞こえて来て、それに合わせるように呼吸をする。
「おやすみ、」
次第に微睡んでいく中、小さく聞こえた秀一さんの言葉を最後に私は意識を手放した。
+ + +
「……、」
かすかに聞こえてきた声に、目を覚ます。重い瞼を開けて光を取り込めば、秀一さんがベッドに腰掛けているのが見えた。
「起きたか?」
「んー……」
ベッドの中で転がったまま背伸びをして、身体を起こす。少しだけ息を吐いて秀一さんを見ると、フッ、と口角を上げて私に触れるだけのキスをした。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
恥ずかしさを隠すように挨拶をすれば、秀一さんもそれに返して。最後にもう一度、というように再度軽くキスをした。
「紅茶、飲むか?」
「アーリーモーニングティー、ですね」
「あぁ。俺は、コーヒーだがな」
フッ、と笑いながら、ベッドサイドに置いていたティーカップを私に差し出す。零すなよ、と言われたので大丈夫ですよ、と言ってそのカップを受け取れば、中には琥珀色の紅茶が淹れられていた。
「美味しい、」
「あったやつを適当に淹れただけだ」
「ふふっ。でも、美味しいですよ」
お母さんがイギリスの人だから、慣れているのだろうか。あまり淹れる機会は無いだろうに秀一さんはちゃんとカップも温めて紅茶を淹れてくれる。
「昨日から、私甘やかされっぱなしですね?」
「嫌だったか?」
「いいえ。嬉しいですよ」
紅茶を口に運びながら、頬を緩める。好きな人から思いっきり甘やかされるのは、嫌いじゃない。少しだけ頬が緩みっぱなしになるのがちょっとアレだけれど、嬉しいものは嬉しいのだから仕方が無い。
「呉羽、」
「ん……」
名前を呼ばれて顔を上げれば、また口を塞がれる。リップ音をさせながら離れた唇は頬、額にも口付けて離れていく。同時に、口付けに酔う私の手から空になったカップを取られた。
「着替えてこい。朝ごはんぐらいなら作ってやる」
「はーい、」
私が使ったカップと、秀一さんが使ったカップを持って秀一さんが部屋を出ていく。どうやら今日は、思いっきり甘やかされるらしい。
2016.02.07
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