「呉羽」
「はい…って、ちょっと待ってください何頭に乗せてるんですか…!?」
秀一さんがパソコンに向かっているから、と私がダイニングテーブルで課題をしていると、秀一さんから名前を呼ばれた。振り向こうと思った瞬間に秀一さんから何かを頭に乗せられて、動かずに私が声をかける。その重みは思っていたよりもアッサリと離れて、私が顔を上げればテーブルの上に紙袋が置かれていた。
「え、何ですか?」
「……今日はホワイトデーなんだが」
「私チョコあげてませんよ!?」
苦肉の策で、そういうことはしたのだけれど。でもその後改めてチョコを渡したりはしていないし、むしろ私が貰いそうになった。それは、さすがに断ったけれど。
「チョコじゃないが、貰っただろう」
「苦肉の策ですしあげたって感じじゃないんですけど…」
「別に構わん。それに、返された方が困る」
「…有難う、御座います」
秀一さんの言葉に、私は渋々ながらもそれを受け取る。何だかいつも貰ってばかりで申し訳ないから、来年は忘れないようにちゃんと作ろう。
紙袋の中を覗けば、中にはラッピングされた箱のようなものが入っている。
「開けても、いいですか?」
「あぁ」
秀一さんが私の頭を撫でながら、隣に座る。毎度ながら随分と可愛いラッピングをしたものを渡されるけれど、どこで買っているのだろうか。
なるべく崩さないようにラッピングされたのを外していけば、出てきたのはボックス型になった、ジュエリーボックス。
「去年は、指輪をあげただろう」
「はい。さすがに学校では外してますけど、休みの日はつけてますよ」
「あぁ、知ってる」
私が服の中に入っていたネックレスのチェーンを取り出して、その先に下がる指輪を見せる。秀一さんは頬杖をつきながらフッと笑った。
「ホワイトデーでも、誕生日でも、何でもいい。毎年少しずつ、俺が埋めてやる」
「言ったからには、埋めてくださいよ?」
「あぁ。いっぱいになったら、また入れ物を買ってやる」
ジュエリーボックスの蓋を開けて眺めていると、横から秀一さんの手が伸びてくる。私が顔を上げて秀一さんを見れば、そのまま腕を取って引き寄せられる。そのまま秀一さんの膝に座って、秀一さんに寄り掛かる。
「いつ、いっぱいになるかなぁ…」
「いっぱいにしたいのか、」
「んー…すぐじゃなくていい、ですけど。これがいっぱいになったとき、これはいつ貰ったやつかひとつひとつ思い出しながら話したいなって」
私の言葉に秀一さんがフッ、と笑って、抱き寄せられる。私が秀一さんを見上げると額にキスをされて、つい口角が緩む。
「それは、ずっと一緒にいてくれるってことだな?」
「えぇ。離してほしくても、離しませんよ?」
頬に触れる秀一さんの手に私の手を重ねる。たとえ嫌がられない限り、私からこの手を話すつもりはないのだ。いつか今日貰ったジュエリーボックスが埋まる日を想像して、甘えるように秀一さんの頬にキスをした。
2016.04.10
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