Marguerite

謎は謎のまま


雨が降る中歩いていると、携帯に1通のメールが届いた。少し前に新しく入った連絡先からだった。送られてきた内容を見て、無意識に携帯を握る手の力が強くなる。

(ごめんなさい、)

秀一さんに向けて心のなかで謝罪をして、立ち止まってそのメールに返信をする。秀一さんが知ったら、怒られるだろうか。無茶なつもりは、無いのだけれど。
そのとき、雨の音に紛れて走る音が聞こえた。同時に、聞き慣れた声。私が振り向けば、コナン君が傘も差さずに走りながら電話をしていた。

(とりあえず追いかけるかな、)

小学1年生にしては怖すぎるぐらいの顔で走っていたコナン君を追いかける。毛利さんたちを先に帰すように促したその電話が終わった瞬間、私は彼の名前を呼ぶ。

「呉羽っ、お前なんで…!」
「すごい顔して走ってたから…。もしかして、水無さん?」
「っ、知ってたのかよ!?」
「昨日たまたま水無さんたちと毛利さんがいるの見かけたから、そうかなって」

組織か何かと繋がったとか?と私が小声で尋ねれば、工藤君が短くあぁ、恐ろしい偶然が重なってな、と答えた。とりあえず水無さんと毛利さんが一緒にいるのを見たのは嘘なのだけれど、深く追求されなかったことに息を吐く。

「それ、同行してもいい?」
「別にいいけど…大丈夫か?組織に狙われてるんじゃあ…」
「私の場合、組織っていうかジンが、みたいだから」

ウォッカとかがどう思っているのかは知らないけれど、ベルモットは誰かに頼まれて私を巻き込まないようにしてくれているようだ。最初こそは私を捕まえようとしていた彼女に何があったのかはわからないけれど、それは私としても有り難い。
工藤君はガシガシと頭をかいて、息を吐く。あんまり危険なことするんじゃねぇぞ、と言ってくれたから、同行は許可されたのだろう。

「お互い死なない程度に行こうか」

命はひとつ、大事にしなきゃね。そう工藤君に言えば、彼は呆れたように息を吐いた。

 + + +

「あら、貴方もいたのね」
「あ…灰原さん」
「哀でいいわ。呼びにくいでしょう?」
「ありがと。私も名前で呼んでいいよ」

博士のビートルの後部座席に乗り込むと、そこには哀ちゃんがいた。そういえば彼女も最初は同行していたんだっけ、と思い出す。彼女と会うのは、私が通り魔に刺された後に会ったのが最後だっただろうか。

「おい博士、灰原は連れて来るなって言っただろ?」
「そうは言ってものォ…」

少し困ったようにそう言った博士に、私は苦笑いをする。というか、私と博士って初対面だったんじゃないだろうか。普通に乗り込んできたけど初めましてな気がする。多分、工藤君や哀ちゃんから話は聞いたことあるような気がするけれど。

「で?その水無怜奈っていうアナウンサーが彼らの仲間だっていうのは確かなんでしょうね?」
「ああ…。奴らのボスのメールアドレスに送信してたし、その後かかって来た電話の相手をこう呼んでたよ…ジンってな!!」

運転席と助手席で話し続ける彼らのは話に耳を傾けていると、哀ちゃんが小さく私の名前を呼んだ。どうしたのかと彼女に視線を移せば、真面目な顔で私を見ていた。

「貴方も、ジンに狙われているのよね?」
「ん…。ベルモットは、巻き込みたくないみたいだけどね」
「ベルモットが?」
「そう。頼まれたって言ってたけど…それが誰かなのまでは…」

首を振って哀ちゃんにそういえば、あまり心当たりになりそうな人はいないわね、と言葉を漏らす。そもそも私を捕らえようとしているのは、ジンの独断なのだろうか。ジンが上に報告をしていないのだとしたら、その可能性は大きい。あの方やラムにまで話が通って、私を捕まえるということが組織の目的だとしたらベルモットは恐らくソレに従うはず。

「知り合いが組織にいるって可能性はないのよね?」
「無い、なぁ…。なんせ私身内誰もいないし。身内じゃないにしても、そういう人はいない、かな。それこそこの前話した諸星さんぐらい?」
「その人が言って殺さないのだとしたら、おかしいわね…」
「というか、真っ先に殺されちゃいそう。ただ、ジンは殺すのじゃなくて捕まえたいみたいだけど。私がいろいろ言ったからかもしれないけど」

薬の作り方を知ってる、なんて言ったからだろうか。殺すのじゃなくて捕まえようとしているのは。
一向に出ない答えに、私は視線を窓の外へと移した。

2016.05.28
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