Marguerite

違和感無いのも困りもの

 
有希子さんの変装術は、いわゆる特殊メイクになるもので。有希子さんは一式道具を持っていて借りてする際は道具に困ることはないけれど、一から一人でしようと道具を揃えるならば中々入手が難しい物もあるようで。その場合は有希子さんに言えば入手してくれるとのことなのでありがたく甘えることとしよう。また、特殊メイクの種類によってはわりと身近なもので代用出来るようだ。
工藤君を無理矢理座らせて早数時間。横から有希子さんの指示を受けながら、工藤君に変装を施していた。

「そうそう、後はここを…」
「えっと、コレ、ですかね……?」
「うん、いい感じよ!」

工藤君は元々顔つきはいい方だ。とりあえず今回は元の顔を活かして性別を変えるということをしている。勿論工藤君が嫌がったら元も子もないので何も言っていない。嫌な予感はしていたのかもしれないけれど、あくまで変装とだけ伝えてある。

「よし、コレで終わり!」
「呉羽ちゃん、初めてにしては上手いわね!」
「ホントですか?」
「うんうん!初めてでコレは上出来よぉ!」

元の世界で学生だった頃、友人に勧められてコスプレというものをしていた黒歴史は黙っておくことにしよう。化粧のスキルはそこで磨いた、なんて黙っていればわからない。雑誌などを見て勉強したことにしておこう。
完成した工藤君の顔は、猫目の元の顔を活かした女の子顔にしてある。けれど、問題は髪型なわけで。

「有希子さん、どうせなら黒のエクステとかありますかね」
「そういうと思って出してるわよー!」

さすが有希子さん、考えることは似たようなことなわけで。私は工藤君の髪の襟足に黒のエクステをつけてウルフヘアーっぽくしてみる。

「大体こんなものですかね?」
「いいわー!私娘も欲しかったのよねぇ」

工藤君を思いっきり抱きしめながら有希子さんが言った。こうして見ると、本当に女の子がいるみたいで自分で言うのも変だけれど中々の出来だと思う。
いろいろ出したものを片付けながら外を見れば、すでに外は真っ暗。あぁ、結構長居をしてしまった。コレは早々に帰らないと迷惑だろう。

「あ、呉羽ちゃん!教わりたいときは新ちゃんの顔なら貸すからいつでもいらっしゃいね!」
「いや、さすがにそれは悪いんじゃあ…」
「いいわよ!ね?新ちゃん!」
「ね?、じゃねぇよ……。女装だけは勘弁だからな」

未だ有希子さんに抱きつかれたままの工藤君はぐったりとしていて、どうやら離そうともがいてもなかなか有希子さんの力が強くて敵わないようだ。
とりあえず工藤くんは女装でなければ問題ないらしく、それならば今度は中性的な顔にでも挑戦してみようか。本当に工藤君が顔を貸してくれるならではあるけれど。
…顔を貸す、っていう言い方って何か喧嘩売ってるみたいだと思ったのはここだけの話にしておこう。

「あ、それかこの道具一式持って行っちゃう?私今ほとんど使ってないし練習したいならいいわよ?」
「いや!さすがにそれは悪いんで…!」
「いいのいいの!荷物は新ちゃんに持って行かせちゃうから!」

『そうと決まればまとめるわよ―!』と言いながら、有希子さんは荷物をまとめ始める。アレ、これは私これ持って帰るフラグ…。
有希子さんがこうなったらもう止められないか、と私はその行為をありがたく受け取ることにする。

「…それにしても、工藤君女装似合うね?」
「嬉しくねぇんだけど……」
「………女の子でも違和感ないね?」
「同じだろ」

工藤君は呆れたような顔をしながら返事をした。申し訳ないことに今の私にはコレが精一杯だ。

「あ、そうだ呉羽ちゃん!夕飯食べていくでしょう?」
「いや、悪いですし帰ります…!家に人来る予定もあるんで…!!」
「あらそうなの?残念ねぇ…。じゃあまた今度一緒にご飯しましょ!」

赤井さんが来る可能性もゼロではないのでお誘いは大変嬉しいのだけれど断りをいれる。先ほど携帯が振動していたので恐らく赤井さんからだろう。
しかしながら外は暗く。このまま一人で返すのもいかがなものかと思ったらしく、有希子さんは工藤君に送るように言った。工藤君も考えは同じらしく、有希子さんの手によってまとめられた荷物を手に取りながら玄関に向かう。……どうやら工藤くんは今の自分の姿を覚えてないらしく、どうするか悩みながら有希子さんを見れば面白そうに口元に人差し指を当てて黙っていろ、とのことなので黙っておくことにする。
早々に玄関を出る工藤君を追いかけるべく、有希子さんと家を出る際にに出くわした優作さんに頭を下げて工藤家を後にした。

2014.08.09
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