帰り道。隣を歩くのは少々ボーイッシュな格好をした猫目の女の子…ではなくて工藤君で。家を出るときはまぁいいかと思ったけれどやっぱりこの人美人なわけで。むしろ送ってもらった後にこの人を一人で帰すのが心配で仕方がない。最も、中身は男の子だからそういう趣味の人でない限りは大丈夫だとは思うけれど…。
「篠宮ってさ……」
「うん?」
「同い年、なんだよな?」
「え?」
工藤くんが、やけに真剣な顔つきで私に尋ねた。確かに外側は工藤君らと同い年だ。ただ、中身はそろそろ結婚を考えた方がいいんじゃないかという年齢である。
ときどき高校生のノリとテンションについていけないときに自分の年齢を実感するのはここだけの話だ。
「あー…悪い。何かお前大人っぽいっていうかさ、なんか一歩引いて周りをちゃんと見てるっていうか…」
どうやら工藤君は私が気にしたと思ったらしく、何か上手いことフォローするような言葉を探している。頭をガシガシと掻きながら悩む姿を見せる。
「一人暮らしだし、どうしてもそうなっちゃうのかもね」
「…一人暮らし?」
「ん。たまに……知り合いの人が泊まったりとか顔出してくれるけど…」
知り合い、で、いい、よね…?…多分。
友達というにはちょっと年齢が離れすぎというか、ちょっと違う気がする。強いて言うなら兄のような、保護者のようなそんな感じだ。
「知り合い?」
「まぁ…そんな感じ。保護者みたいな…」
「ふーん?」
イマイチ納得出来てないような顔をしているけれど、正直それ以上聞かれると私もどう答えていいのかがわからない。
実際は保護者でもないのだけれど、原作前に遭遇した時のことを考えて保護者ということにしていた方が都合がいいだろう。年齢的には保護者で通じるはずだ。
考えながら角を曲がろうとしたとき、ふいに工藤君から腕を掴んで引き寄せられる。
「人、来てる」
「え、あ、すみませ…」
「……呉羽」
「えっ」
…状況を整理しよう。工藤君が曲がり角から出てくる人に気付いて、私を引き寄せた。私は工藤君に引き寄せられた事によって軽く工藤君に抱き寄せられたような形になって。そして私は角から出てきた人にぶつかりかけたことに謝ろうとして顔を上げた。そこには、赤井さんが立っていた。
赤井さんはちらりと工藤君を見て、小さく息を吐いた。
「あまり遅い時間まで女だけでうろつくな、危ないだろう」
「ご、ごめんなさい……」
工藤君がいる手前だからだろうか。本当の保護者のようなセリフを言った後、赤井さんが私の頭を撫でた。横で、工藤くんが私と赤井さんを見比べているが、説明はまた後日にしよう。
赤井さんが私のことを引き寄せて、再度工藤君を見た。
「…君も、呉羽は自分が連れて帰るから早く帰りなさい」
「え、あ、はい…」
いきなり声をかけられたからか。少し驚いたように声を返した。振り向いて私が工藤君に手を振れば、工藤君は少し笑いながら反対方向へ歩いて行った。
工藤君が見えなくなるのと同時に、赤井さんは私を腕の中から離した。
「お仕事、もう終わったんですか?」
「あぁ。思ったより早く終わってな」
珍しいこともあるものだ、と私が思っていると、赤井さんが腕時計で今の時間を確認する。もうすでに日も落ちていて、時間的には夕飯頃だろう。
「赤井さん、夕飯食べました?」
「…まだだな」
「じゃあ、帰ったらすぐに作りますね」
「いや、」
赤井さんは私の手を取って、家と反対方向に向かう。そのまま歩いて行く赤井さんに半ば引きづられるように、私は脚を進める。
何かあったのだろうかと赤井さんを見上げれば、私を見下ろす赤井さんと目があった。赤井さんは脚を止め、一度フッと笑うとまた歩き始める。
「…丁度、いい店を知っている。そこに行くか」
「え、あ、はい…」
「車が向こうにあるから、そこまで少し歩くぞ」
「それは、構いませんけど…」
赤井さんの中で何があったのだろうか。赤井さんに掴まれた手はそのままで、まるで私を自分のものだと言わんばかりの彼の姿に、私はただ困惑するしかなかった。
2014.08.17
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