「To-morrow, and to-morrow, and to-morrow,」
大荷物を持った人が賑わう中、小さく呟きながら人を待つ。三度目になるこの場所は、まだ少しだけ見慣れないものも多い。周りに日本人は少ないけれど、場所が場所だけにあまり周りに気にされることもないようだ・
「Creeps in this petty pace from day to day,」
赤井さんに言わなくていいの?、とコナン君に尋ねられたことを思い出す。知ってるのはコナン君と学校関係の人たちだろうか。あぁ、あとはジェイムズさんとジョディさんか。目的を知っているのは、コナン君だけなのだけれども。
「To the last syllable of recorded time….」
とん、と後ろから肩を叩かれて振り向けば、久しぶりに会ったその人に笑みを浮かべる。随分突然のお願いだったのに、よく聞いてくれたものだ。
「そのセリフは、マクベスだね。何か特別な思い入れでもあるのかい?」
「……どうでしょう。面白い話だとは思いますけどね」
「あぁ、でも…ある意味では最後の一瞬ではなくとも、君の中では歴史的な瞬間かもしれないな」
「かもしれません。まさか、自らアレを手に取ろうなんて考えていませんでしたから」
自らの両手を見て、思う。私に、出来るのだろうかと。秀一さんほどになれるとは思ってはいない。せめて、自らを護れるぐらいにはなりたい。欲を言うのならば、彼を護れるようにと。
「最低限、半年は見積もった方がいいと思うが……大丈夫かね?」
「半年も、いりません」
「ほう、」
「三ヶ月で、モノにします」
あまり、長い時間ここにはいられない。秀一さんには一ヶ月もしないうちに人づてにバレるだろうけれど、それでも構わない。怒られることは、覚悟の上だ。それに、名目は傷心旅行ということにしてある。その先で何をしていたかは、コナン君は口止めをしているだけに漏れることはないだろう。
「良い覚悟だ。君の師となる人のところに、案内しよう」
「有難うございます、優作さん」
楽しげに笑みを浮かべる彼に、お礼を述べた。
+ + +
――三ヶ月で、モノにします。
真っ直ぐに私を見ながら言った彼女の目は、覚悟をした目だと思った。生半可な気持ちで出来ることじゃない。それは、承知の上での頼みだとは思っていた。だが、まさかここまでとは思っていなかったのも確かだ。
「そこまでに護りたい人は、どんな人なのか楽しみだな、」
有希子は、もう彼に会ったんだったか。彼女に会ったらどんな人なのか聞いてみるのも悪く無いだろう。直接会うまで、楽しみにしていてもいいのだが。
「三ヶ月後を、楽しみにしているよ」
どこまで、彼女が成長するのか。恐らくは初めて触れるであろうソレを、どこまで使いこなせるようになるのか。口角を上げて、彼女を思った。
2016.08.04
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