(どこだろう、ここ……)
目が覚めて辺りを見回すも、場所に見覚えはない。幸いなことに縛られてはいないで、親切心なのかなんなのか私はベッドに寝かされていた。手荒に扱われていないところはあると、あの男はまだ私を殺すつもりはないのだろうか。
「あぁ、お目覚めですか?」
「……どうも」
ガチャリ、と扉の開く音がして、空港で出会った男の人が部屋に入ってくる。ぐるりと部屋を見渡しても窓は無く、窓から飛び出て逃げるということも不可能そうだ。また、私がいるこの部屋は随分と広く、けれどもベッドと椅子しか物が置かれていない。扉には彼が入ってくるときにちらりと外にスーツの人がいたから、恐らくは監視がいる。
「何が、目的……?わざわざ私を誘拐して、何をするの?」
「貴方は、何が目的だと思いますか?」
「……秀一さんが、絡んでいることだけは分かるわ」
一番最初に私を見て彼が出した名前は、秀一さんの名前だった。秀一さんの部下だと言った彼は、本当かどうかは分からないけれど接点はあったのではないだろうか。それが、部下としてかは分からないけれど。
「私は、彼に少々恨みがありましてね。あの男にこんな弱みが出来ているとは、思いませんでしたよ」
彼が、ベッドの向かいにある椅子に座る。監視でもするように座って私を眺めるその姿に、虫唾が走る。拘束をされていないとはいえ、変に動けば何をされるか分かったものじゃない。ここは、大人しくしているのが得策だろうか。
(でも、この人は秀一さんの死を知らない気がする……)
まだ、FBI等には出回っていないのだろうか。あえて隠している、という可能性もあるのだけれど。もし目の前の男が秀一さんの死を知っているのなら、私を誘拐していいことなど何もない。
「私を人質に、秀一さんを呼び出すの?」
「えぇ。貴方の携帯を使わせていただきましたが……あの男、出ませんね」
「仕事中では?」
「あぁ、この部屋には時計がありませんでしたね。もう23時ですよ」
目の前の男の言葉に、眉根を寄せる。アメリカからこっちに戻ってくる飛行機の中で寝ていたとはいえ、時差ボケなのだろうか。危ない身であるというのにそんなに寝てしまったというのはなかなかのことだろう。
「秀一さんを呼び出して……どうするの?」
「あのスカした顔に顔に風穴を開けられたら、どれだけ気持ちいいでしょうね?」
「っ……!!」
「大丈夫ですよ。貴方の頑張り次第では、少し痛みつけるだけで終わらせてあげます」
目の前の男が、突然立ち上がる。そのままカツン、カツンと足音を立てながら私の元へと向かう。ベッドの上で後ずさるも、彼は私に近付いて腕を掴む。そのまま、手荒に押し倒されて。
「何、を……!」
「君は、赤井秀一に随分と大事にされているようだね?」
「っ………」
「大事なものを汚されたら、どんな顔をするだろうか」
「嫌っ……!」
「いいのかい?君が嫌がれば嫌がる程、あの男は酷い目に合う」
それでもいいというのなら、好きなだけ暴れるといい。そう、耳元で囁かれる。その言葉に、ゾクリと背中が震えた。腕を押さえつけられて、組み敷かれる。これだけ広い部屋にベッドと椅子がひとつだけなのは、最初からそういうつもりだったのだろうか。
「秀一さんに、何をするの…?」
「何を、しようか。最終的にあの頭に風穴は開けたいが……絶望する顔も見たいものだ」
「悪趣味な、人……。私を人質にしても、彼は来ませんよ」
「さぁ、どうでしょうね」
片手で私の腕を押さえつけたまま、男はポケットから小瓶を取り出す。中には、錠剤のようなもの。それを数錠取り出して容赦なく私の口に入れて、そのまま飲み込めと言うように私の口元を手で覆って吐き出させないようにされる。
「っ……!」
ゴクン、と錠剤が喉を通りすぎる。なんの、錠剤なのだろうか。私が錠剤を飲んだことを確認するように無理矢理キスをされて、舌を入れられる。
(気持ち悪いっ……!!)
秀一さんにされる時とは、違う感覚。口の中を這う舌が、気持ち悪い。肩を押して離れるように促すけれども彼は離れずに、暫くそのまま口内を犯されてようやく離れる。
「あの男と連絡がつくまで……いいことでも、しましょうか」
「っ……!」
楽しげに私を見下ろすその姿に、背筋がゾクリと震えた。
2016.08.22
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