Marguerite

一歩下がって見る景色


沖矢さんのアパートが燃えて何となくその現場にいるけれど正直なところ私は沖矢さんのアリバイを証明することが出来るわけでもないので少し暇だ。開人君の日記を見て黄色い人は誰だ、という話になったらしい少年探偵団を見て小さく欠伸をする。朝から起こされて呼び出されたせいでちょっと眠い。

「一通り、このアパートの住人3人に聞きたい事は聞き終えましたが…」
「そ、そうか…」
「どうかしましたか?」

刑事さんに尋ねられて、弓長警部がことの説明をする。開人君は小学1年生にしては頭の冴えるコナン君に夜な夜な不審な行動を取る住人がいることを調べてもらうつもりだったらしい。そういえばそんな話だったなー、なんて思いながらアパートの住人たちに視線を移す。

(それなりに話してるってことは一応ご近所付き合いもしてたのかな……)

見た目が見た目だから違和感こそないけれど見た目が秀一さんだったら怪しさ満点だっただろうか。
刑事さんが弓長警部に開人君の日記を手渡されてそれを読み上げる。ただ他人が聞くと至って普通の日記。その日記を読む限りでは赤い人、白い人、黄色い人が誰なのかが分かれば自ずと誰がこのアパートを燃えたか分かるということらしい。

(赤井さんが赤い人ってのも何か凄い)

子どもの考えることだからたまたまなのだろうけれど、赤井さんが赤い人というのはそれだけ赤というものに縁があるのだろうか。この前私の家で車のパンフレット見てるときに赤もいいな、なんて言っていたのを私は忘れていない。赤とはまた派手な、とパンフレットを見たときには思ったけれどカッコいいし似合うんだよなぁ、なんて赤井さんとは似ても似つかない沖矢さんを見て口角を上げた。

「赤白黄色ですか…」
「お花の色みたいだね!」
「うーん…黒い奴ならいるんだけどなぁ…」

元太君の言葉に、哀ちゃんの目が見開かれる。歩美ちゃんが黒い人?と元太君に不思議そうに聞き返せば、色黒で黒い服を着ているからということらしい。子どもならではの発想というやつだろうか。けれど、それに対して歩美ちゃんが太った人や眼鏡の人も黒い服を着ているということを指摘する。

「まぁ、顔の色ならあの眼鏡の人が白ですよね…」
「うん!あの太った人は色白って言うより青白いもんね…」

中の人が無駄に白いから変装しても白浮きさせないようにしようとするとあの黒さが限界だったんだよ、と子どもたちには見えないように苦笑いをする。しようと思えばそれだけ黒くすることは可能だけれど普段から別人のように変装をする、ということを考えると変装するまでの時間や化粧品が他に色移りしないこと、バレにくさを考えたらを考えたらアレがギリギリ妥協ラインだったのが懐かしい。

「とにかくだ…、もう少し突っ込んで聞いて探ってみるか…。どいつがその問題の…黄色い某かっていうのをな…」

むしろ弓長警部の方が犯人みたいだなぁ、なんてのんきなことを思いつつ私はその場から数歩下がった。

 + + +

(あー、光彦君が哀ちゃんに巻き込まれてる…)

アパートが燃えているし事件には事件なのだからこんなことを思ってはいけないのだろうけど正直なところ殺人起きてないからもう帰ってもいいかな、という気分だ。帰らないけれど。
光彦君を盾にするようにして容疑者三人を見る哀ちゃんを見て心のなかで光彦君に合掌をしておく。小学一年生で好きな女の子の顔をずっと見ていて平然を保てる人がいたら見てみたい。

「は、灰原さん…痛、」

そろそろ光彦君が哀ちゃんと向き合うことにも肩を掴まれていることにも限界だろうか。光彦君がコケる前に声をかけようと思ったけれど、光彦君が口を開いてそのままコケるのが先立った。ふいに色黒の男性が光彦君に近付いて絆創膏を差し出すのを見てこれもある意味ヒントになるからまぁいいか、とコナン君を見る。事件まだ解けそうにはないらしい。

(……にしても暇だ)

あまり口を出す場面も無いことも多い。欠伸をしながら沖矢さんに視線を移せば彼は意味深に口角を上げるだけだった。

2017.04.05
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