Marguerite

日記から出たヒント

 
「『ぶな屋敷』だね…」
「え!?」
「ぶな屋敷の事件のときにホームズがワトソン博士に言った台詞だ…」

なんでそんなもの覚えてるんだよ、と言いたくなった私は間違っているだろうか。そもそも秀一さんって私の家に来ていたときにホームズは本が家にない以上読んでいない筈だ。となると私物で持っていたのかというとまず無いだろう。秀一さんなら英語でも日本語でも読めるだろうけれどそういう問題じゃない。わざわざ荷物になるようなものを秀一さんが持つとは思えない。結局私の家に置いている私物も数えられる程度だ。

「へー!お兄さんもホームズ好きだったんだ!」
「ああ…。一冊残らず持っていたよ…。全て焼けてしまったけどね…」
「……沖矢さんがホームズ好きとか初耳」
「おや、ホームズに嫉妬ですか」
「本気でそう思うなら病院行った方がいいと思う…」

何でだろう、沖矢さんになってからやけにガンガン攻めてきているような気がする。中身が赤井さんだと思うと変な感じもするけれど、それだけキャラ作りを徹底していると思っていいのだろうか。

「まあホームズはともかく、この日記を無視する事はできねぇよ!できれば入院しているその子の回復を待って誰が黄色い人か聞けば手っ取り早いんだが…」
「さっき病院に確認しましたが、開人君の意識はまだ戻らないそうです…」
「そうか…」

コナン君が弓長警部たちの会話を見上げながら聞いているのが視界に入る。歩美ちゃんは警部の持っている日記が気になったのか弓長警部に見せてほしいとお願いすれば了承して見せているのを見て苦笑いを浮かべる。一応現場のモノなのに見せていいものなのだろうか。少年探偵団はある意味警察とのコネクションがあるし実際彼らのおかげで事件が解けたこともあるからなのかもしれないけれど。あるいは被害者の同級生だからか。

(あ、沖矢さんまたなんか話してる……)

住人らと何をそんなに話しているのか。若干まだ沖矢さんになったのに私自身慣れていないため声もかけにくい。火事場から大量のミニカーが出てきた、ということを弓長警部に報告する刑事さんの声に耳を傾ける。その数はざっと100台は超えていたという。生憎周りにそういうのが好きな男の子がいないから金額は詳しく分からないのだけれど結構な金額なのではないだろうか。見知ったコでお見舞いに行くなら持っていくならミニカーで決定だろう。

「あれ?何だろこれ?」
「え?」
「ホラ、この最後の…。『起きたら江戸川君にこの事話さなきゃ』ってトコの…『えどがわ』っていう字を何度も消して書き直してるから…ちょっと黒くなってる」

歩美ちゃんが広げている開人君の日記を見るのに少ししゃがんで確認すれば、小学生らしい字で書かれた日記のその文字の部分は確かに黒くなっている。歩美ちゃんの後ろから元田君と光彦君が覗いて、それに続くようにコナン君も覗く。漢字で書こうとしたのか、という意見が出たがうっすら見えるのはカタカナのようだ。

「クロシロ君!」
「え?」
「何だよそりゃ?」

突然の刑事さんの言葉に、全員がそちらを向く。どうやら刑事さんが病院に電話した際に母親が言っていたらしい。学校で起きた事件をすぐに解決してしまうすごく頭のいい男の子が隣のクラスにいて、明日ウチに来る旨を嬉しそうに電話してきたと。そして開人君がその男の子に付けたあだ名が『クロシロ君』だと。

(あぁ、コナン君も解けたんだ…)

大方沖矢さんも犯人が誰かだなんてほぼ分かっているのだろうけど。元々頭はいいし勘もいい。チートかよ、と言いたくなるぐらいだから分かってて何も言わないとか大いにあり得る。人のこと言えないけど何気に性格悪いと思う。

「いや…。その必要はないさ…」

謎が全て繋がったらしいコナン君が、開人が元気になるのを待った方がいい、という光彦君の意見を止める。ニヤリ、と子どもらしからぬ笑みの浮かべ方に、ついこちらの口角も上がる。

「クロシロ君としては…この場でシロクロはっきりさせてやろうじゃねぇか!あの中の誰が黄色い放火犯かって事をな!!」

2017.04.20
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