Marguerite

それぞれの色


「あのよォ…さっきから気になってるんスけど…」
「何なんですかその日記とは?」
「『黄色い人』とかいうのも聞こえてきたけど…」

住人三人がしびれを切らしたのか、弓長警部に尋ねる。正確には、2人だろうか。多分沖矢さんは薄々誰なのか気付いているのだろう。薄々じゃないかもしれないけど。
火事になったアパートの大家の息子の日記だということを弓長警部が説明し、続けてこの事件には関係が無いと言おうとする。が、光彦君が関係大有りです、と声を挙げた。

「開人君の日記に書いてあったんですよ!夜中突然、その『黄色い人』が帰って来て開人君のお父さんと口喧嘩してたと!あなた達3人は火事のあった夜は出かけていて、朝帰って来たと言ってましたよね?」
「これって誰かがウソついてるって事だもん!」
「そのウソついてる黄色い奴ってのがアパートに火をつけた犯人なんだよ!!」

光彦君、歩美ちゃん、元太君が声を張り上げながら容疑者の三人に向けて言った。続けるようにその黄色い奴が夜になると怪しい事をしていた、と元太君が言えば細井さんが、はぁ、と意味が分からないと言うように言った。

「確かに大家さんの息子の事はよく知ってるけどよ…」
「あの子に誰か黄色い人なんて呼ばれてましたか?」
「さあ…」
「それにその怪しい事ってどんな事なんだい?」
「まあガキの言う事だから気にするな…」

頼むから沖矢さんちょっと黙っててくれないかな。そう思いつつ子どもたちに黄色い人のことを言ったら駄目じゃないか、という弓長警部を見て息を吐く。助け舟になるかは分からないけれど、一応言っておこうか。

「開人君、このアパートの住人さんにそれぞれ色であだ名を付けてたみたいですよ。それが誰がどれなのかは分かりませんけど、多分さっきのクロシロ君とかいうのもそのひとつかと」
「色で、ですか…。あぁ、それでさっき色を聞いてきたんですね」
「参考程度にですけどね。あんまり参考になりませんでしたが。まぁでも大丈夫でしょう」

私が口角を上げてコナン君を見れば、どうやら問題は無さそうだ。探偵の顔をした彼を見る限り、後は任せていいのだろう。

「大丈夫だよ!この3人の中の誰が黄色い放火犯かって事は…もう分かってるからさ!」

得意げに言うコナン君は、もう全て謎が解けている。弓長警部は本当に大丈夫なのかと心配するようにコナン君を呼び止めるが、コナン君は小学生らしい笑顔で自分もすぐに分かったわけじゃない、と告げる。

「開人君の日記には赤い人や白い人も出てくるから…その赤い人や白い人が誰なのかがわかって、やっと黄色い人が分かったってわけさ!」
「あ、赤い人や白い人もいるのかよ?」
「うん!日記にはこう書いてあるよ!今日は朝からやな天気…ボクは早く学校に行かなきゃいけないけど…赤い人は寝坊できるかもね…」

細井さんが聞き返すのを聞いて、コナン君が開人君の日記を開いて読み始める。パッと見は子どもが付けたあだ名だからこそ子どもであるコナン君が解けたように見えるだろうか。赤い人について説明するコナン君を横目に、私は沖矢さんの隣に立つ。

「どうかしました?」
「どうせ謎解けてるんですよね」
「さぁ、どうでしょう」

あくまでそのキャラかよ、と苦笑いをしつつ赤い人が沖矢さんだとコナン君が告げる。弓長警部が顔色からすると赤より白じゃないか、と眉間にシワを作りながら尋ねればきっと開人君は車が好きだったと。

「車で赤っていえば真っ先に思いつくのは…」
「消防車だ!!」

子どもたち3人が笑顔で口を揃えて言った。赤井さんが朝から水撒きをしていると思うとちょっと笑いそうになって、それに気付いたのか沖矢さんが隣で小さく息を吐く。だって、あの赤井さんが水撒きって。

「にしても、赤い人だって」
「まぁ、間違ってはいないですね」
「じゃあ次から赤い人って呼びましょうか?」
「普通に呼んでくれませんかね、名前で」
「沖矢さんで」

何度も言うが私と沖矢さんの関係はあくまで知人だ。まぁ、沖矢さんは私のことを名前で呼んでいるのだけれどそれは兄の友人ということで分かりやすくするためのいう理由が一応ある。
赤い人の説明を終えて今度は白い人の説明に入ったコナン君を見て、ひとり私はこの後どうするかとのんきなことを考え始めた。

2017.05.10
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