Marguerite

追いつめて解いていく

 
「…とまあ残るは黄色い人だが…」
「黄色い車っていえば…」
「タクシーは黄色いぞ!」
「でも白や緑もあるよ!」

白い車両である救急車は絆創膏を開人にあげたことがある細井さん、という説明を終えて黄色い人は誰なのかということになった。まぁ残ってるのはあと一人だけなのだけれども。黄色って何があるっけ、というように話す子どもたちの意見を聞いてか、弓長警部が車両系の建設機械を述べる。

「ありゃー事故を防ぐために確認しやすい明るい黄色で塗装されている場合が多いな…」
「けんせつキカイ?」
「ブルドーザーとかショベルカーとか土を掘ったりならしたりする車だよ…」
「そう…つまり、指の爪に土が入っていた…真壁さん…あなたがこのアパートに放火した黄色い人ってわけさ!!」

男の子ならともかく女の子に建設機械はパッと思い浮かばないのだろう、歩美ちゃんが不思議そうに建設機械を聞き返せば弓長警部がそれについて説明をする。睨みつけるようにしてコナン君が真壁さんの名前を呼んで、黄色い人だと名指しした。

「な、何言ってんだよ!!言っただろ?この爪の泥はサバイバルゲームで山の中を駆けずり回ったからだって…」
「確か派手にやられてペイント弾の色が落ちなくて服がダメになたって言ってたよね?」
「あ、あぁ…」
「日本でやってるサバイバルゲームで使われているのはBB弾を発射するエアソフトガン…。ペイント弾を使うのはペイントボールって別のゲームだよ!ルールはサバイバルゲームと一緒みたいだけどね…」

先に犯人に確認を取ってから追いつめてくる辺り絶対に敵に回したくない人だな、なんてコナン君を見ながら思う。それは私の隣に立つ沖矢さんにも言えることかもしれないけれど。
真壁さんは子どもにも分かりやすいようにサバイバルゲームだと言った、と言い訳のようなことを述べるけれど探偵モードのコナン君の前ではそんな言い訳は通用しない。ペイント弾は水性のインクで服に付いても洗い落とせば綺麗に落ちると畳み掛けてくる。

「ホ、ホォー…」
「それに真壁さん、好きな色は迷彩服のネイビーグリーンって言ってたよね?ネイビーの名前が付く色は海軍の制服でよく使われているネイビーブルーっていう藍色だけ…。迷彩服によく使われているのはオリーブドラブっていう緑だと思うけど?」

コナン君みたいに頭のいい子どもっていいな、なんて思ったけど訂正しよう、こんな小学1年生ちょっと嫌だ。コナン君はさらに彼を追い詰めるようにアパートの庭部分を調べてみたらいいのではないかと言う。曰く、黄色い人が夜な夜な怪しいことをしていたという開人君の日記と爪の泥を嘘までついて誤魔化そうとしたことを合わせたら真壁さんは夜な夜な人目を忍んで庭を掘り起こしていたと。

「だから埋まってるはずだよ!真壁さんが誰にも見せたくない大事な何かがね!埋まってるのはもしかしたらデイトレードで儲けたお金とか…だったりして…」

もういやだこんな小学1年生。何でデイトレードとか知ってるの。中身が高校生だからだけど。
コナン君の言葉に真壁さんはぽつりぽつりと放火の動機について話し始めていく。デイトレードでいいシステムを思いつき、しかし税金を払いたくない為100万溜まる度に口座から降ろしてアタッシュケースに詰め込んで庭に埋めていたらしい。気持ちは分からなくないけど日本という国にいる以上、納税は国民の義務だろうに。大家さんにアタッシュケースが見つかったことにより問いただされ突き飛ばしたら階段から落ち、大家さんが動かなくなってしまったのを見て犯行に及んだらしい。燃えてしまえば、何もかもリセットできると思って。

「リセットだとォ!?わかってんのか!?お前がやった事はゲームに負けたから電源を切るのとはわけが違う!!何十年も培ったこのアパートとその思い出を一夜にして黒コゲにしちまったんだ!!」

真壁さんの胸ぐらを掴んで述べる弓長警部に、真壁さんは顔を引き攣らせる。現役警部の怒りだ、怖い事この上ないだろう。こういうゲームみたいにリセットしようとする人がいるからゲームが好きだという何の罪もない人が冷ややかな目で見られることになってしまうからやめてほしい。

(所得税法違反に傷害罪、現住建造物等放火罪って中々だなぁ……)

所得税法違反はともかく傷害罪と現住建造物等放火罪は大家さんがどこまで訴えるかによって処罰が変わってきそうだけれど。
怒鳴りあげる弓長警部の言葉が一息ついたところで、刑事さんが声をかける。病院から連絡があり、大家さんの手術が成功し開人君の意識が無事に戻ったらしい。

「沖矢さんから見たら、私って何色ですか?」
「そうですね…。マーガレットとかどうでしょう?」
「色じゃないんですけどソレ」

花じゃん。マーガレットって花じゃん。白と黄色のやつが一般的だろうけれどピンクだってあるわけで、もう何が何だかという感じだ。毎朝花に水やりをしていたから妙に花にくわしくなったのだろうか。質問にはキチンと答えてくれない沖矢さんを見上げれば、面白そうに笑みを浮かべるだけだ。

「それじゃあこれからみんなで開人君のお見舞いに行きますか!」
「さんせー!」
「その病院結構遠いから博士に車で連れてってもらおーぜ!」
「博士?」

事件も解決したことだし、と子どもたちが話しているのが沖矢さんの耳にも届いたらしく聞き返す。そうだよね、今の沖矢さんは家なき子だ。子どもたちと話をしてうまい事博士に合わせてもらうことになった沖矢さんの会話を耳に入れつつ、哀ちゃんを見る。コナン君の背中に隠れるようにして沖矢さんを見る哀ちゃんは、警戒しているようだ。

(まぁ、事情話すわけにもいかないしね……)

沖矢さんが実は変装しているFBIの人間で、かつ姉の死のきっかけとなってしまった恋人だなんて言えないだろう。工藤邸に行くことにはなるだろうけれど一応私の家に来ることも提案した方がいいだろうと思いながら息を吐いた。

2017.06.20
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