呉羽の料理を食べるようになったのは、いつからだっただろうか。楽しげにキッチンに立って料理をする呉羽を見て、思う。
「秀一さん、ちょっと味見してもらってもいいですか?」
「あぁ、」
呉羽に呼ばれて、キッチンへと向かう。たった今作ったソレを小皿に入れて、差し出される。俺も何度か食べたことがある筈だが、と思いつつ口に運べば、味見をさせたことに納得した。
「味付け、変えたのか」
「ですです!こっちの方が秀一さんの好みかなって思ったんですけどどうですか?」
「あぁ、美味い」
「ふふっ、良かった」
嬉しそうに笑う呉羽を見て、口角が上がるのが自分でも分かった。とりあえず料理は一通り終わったのか、俺の手から小皿を取って洗い物を始める。
(いつから、だっだんだろうな……)
呉羽の作ったものを食べるようになって。共に、寝るようになって。そうなることが必然であったかのように、自然とそうなっていった。変化することに、自分でも驚くぐらいに抵抗は無かった。食事も睡眠も、呉羽と共にするようになって随分と時間が経ったような気がする。けれど、こうして考えてみればここ一年程度の話だ。
「秀一さーん?どうしました?」
「……いや、少し考え事をしていただけだ」
洗い物を終えた呉羽が、俺のことを覗きこむようにして見る。その姿でさえ愛しいと思う自分に、思わず笑う。恋に落ちる、とは、よく言ったものだ。
「お仕事ですか?」
「いや……呉羽のことだ」
「え、私?」
「あぁ、」
呉羽の身体を引き寄せて、触れるだけのキスをする。突然のことに呉羽は驚いたらしく、瞬きをしながら俺の顔をジッと見ていた。
「今思えば、こうして一緒に食事をすることも、寝ることもあまり抵抗は無かったな、と思ってただけだ」
「そう、なんですか?」
「あぁ。まぁ、一緒に寝るのはさすがにどうかとは思ったが……嫌だと思ったわけじゃないしな」
「ふふっ、嬉しいですね」
頬を緩めながら、呉羽が抱きつく。俺も腰に手を回して、引き寄せる。傍にいるのが当たり前であったように、引き寄せられるかのように。
呉羽の身体を抱え上げて、キスをする。首に腕を回して頬を緩める呉羽に、拒否するつもりはないのだろう。
「ソファーと寝室、どっちがいい?」
「寝室で、お願いします」
選んだ場所から考えるの、呉羽もそのつもりなのだろう。もう一度触れるだけのキスをして、寝室に向けて脚を動かした。
2016.07.18
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