(し、死ぬかと思った…!!)
家の近くまで来て、息を吐きながら思う。秀吉さんのことは個人的には気になるけれど、関わってしまったら芋づる式に由美さんたち警察関係者と関わってしまいそうで怖い。関わるのは、最低限の人間だけでいいだろう。赤井さんだけなら、無害な筈だ。多分。
「…あ」
歩き始めて、今の状態に気が付く。学校帰りに買い物に行った私は、制服で。恐らくさっき会った彼はこの制服がどこの学校の制服かは知っているだろうし、調べることだって容易だろう。
明日以降、何もないといいんだけど。そう思いつつ、また息を吐いた。
+ + +
どうしてこうなった。
それが、一番最初の感想だった。学校の門のところに、見覚えのある人がいる、とは思った。昨日とは違って、眼鏡はしているけれども髭は剃られている。さすがに高校の前で待ち伏せをするからなのだろうか。
(帰りたいけど帰れない…)
多分、今門の外に出れば彼に捕まるだろう。何故こうまでして私のことを探すのか。多分、私が拾った紙…というより、写真。アレが、やっぱり大事なものだったからなのだろう。そんな名を名乗るほどのことはしていない。目の前で落とされたから拾っただけだ。
(いっそ裏から塀飛び越えるかな…)
飛び越えようと思って、飛び越えられない高さでは無い筈。高かったにしても塀の傍には大体大きめの木があることが多い。
踵を引き返して来た道を戻ろうとしたとき、私のポケットの中で携帯が震える。赤井さんからしかかかってこない着信を確認もせずに通話に切り替える。案の定赤井さんで、どこにいるかを尋ねられたので学校を出ようとしていたところ、と告げる。すると、外に部外者の人間が立っていないか、と。呆れたような赤井さんの声に、私も苦笑いを浮かべる。
「いますね。眼鏡かけていて、和服が似合いそうな人が」
私の言葉に、赤井さんが呆れたように息を吐いた。小さく代わってくれ、と言われたので諦めて門の外にいた彼に声をかける。私の姿を見てパッ、と笑みを浮かべた彼を見て犬っぽい、と思ったのはここだけの話だ。
とりあえず通話状態になっている携帯を相手へ差し出して、代わってくれ、と言われたのでと言えば不思議そうに首を傾げながら彼は携帯に応答する。瞬間、彼の肩がビクリと跳ねた。
+ + +
「まさか兄さんが高校生に手を出しているとは思わなかったよ」
「別に手は出していない」
学校の前でやり取りを続けるのも悪いだろう、ということでとりあえず秀吉さんを私の家へと招いた。あまり関わりたくは無かったんだけどなぁと思ったけれどももうここまで来たらそれも無理な話だろう。
赤井さんとの関係を聞かれてとりあえずときどき泊まっていますよ、とだけ言っておいた。嘘は言っていない。そんな話をしていると赤井さんが帰って来て。少しだけ不機嫌そうにソファーに座っている。
「っていうか、何で秀吉さん、が、来るってわかったんですか?」
「制服を聞かれたからな…。そもそも俺に訊く方が間違っているだろうに」
「兄さんに訊いたのは、ダメ元だったんだけどね」
赤井さんの隣に腰を降ろせば、八つ当たりでもするかのように私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。それを見た秀吉さんが、意味深に口角を上げた。
「ところで、呉羽さんはいくつなの?」
「15歳で高校一年生です」
「……兄さん、」
「だから手は出してないと言ってるだろう」
2人のやり取りに、苦笑いを浮かべる。妹と同い年じゃないか、と言いたいのだろう。でも泊まっている、と言っても赤井さんが寝るのは基本的にソファーだし布団を出すこともあるけど私の部屋とは別だから実際手を出されたかと言えばノーだ。抱き寄せられたことはあるけれどあれはノーカウントってことで。
(人の話し声がするのって、落ち着くなぁ…)
私と赤井さんが話してなければこの家に会話は無い。誰かが話しているのを聞く、ということも出来ない。久しぶりに家の中で起こったことに頬を緩めながら、赤井さんに寄り掛かった。
2015.08.11
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