Marguerite

頭のいい居候

 
「えぇっ!?先月からここに居候してる大学院生!?」

コナンくんからかかってきた電話からの説明で毛利さんがホントなのかと聞き返す。事情が事情とはいえ幼馴染である彼女よりも私が先にここに沖矢さんが居候している、と知っていたのはちょっと心が痛む。ちなみに沖矢さんは再度歯磨きをし始めている。自身が不審者と間違われていたのに随分とのんきなものだ。

(まぁ、いざとなったら女子高生二人ぐらい抑え込められるか)

いくら毛利さんが空手の都大会に出たことがあるとはいえそこは男女の力の差。鈴木さんに至っては何か護身術のようなものをしていなかっただけに簡単だろう。ほぼコナン君が一方的に話す形で通話が終わったようで、それが終わると二人は沖矢さんに振り返って謝罪を述べる。とりあえず私も歯磨こう。口の中が苦いのは愛想のいい笑みを浮かべた大学院生の中の人のせいだ。

「あ、お昼食べてないや」

控えめな音で私の身体は胃が空っぽであるということを告げるように音がなった。そういえば学校終わってすぐこっちに来たしそれ以降はベッドの上にいたから何も食していない。胃が空だからとりあえず何でもいいから後で食べようか、なんて思ったけど歯磨きをしながらこの後のことを思い出す。そういえばコレ沖矢さんと工藤君で事件解決するんだった。

(これはお昼食べずにそのまま夜になるかもなー…)

洗面所の外で沖矢さんに謝罪をする二人の声を聞きながらそんなことを思う。ここに来るなりご飯も食べずにだったから仕方ない。のんきなことを考えているとバタバタと外にいた二人が入ってきて思わず咽そうになったのをなんとか堪えた。

「あー……歯磨き粉飲むかと思った」
「ごめん呉羽……」
「呉羽ってばここに居候してる人いるって知ってるなら言ってくれたらよかったのに」
「んー、工藤くんから聞いてるかと」

ちょっとゴメン口濯ぐ、と言って手を洗い終えた二人に避けてもらってうがいをする。何よあのイケメン、と開いている扉の隙間から沖矢さんを見る二人をちらりと盗み見て少しだけ口角を上げる。有希子さん好みの顔なんだ、イケメンじゃないわけがない。

(この家折り紙とかあったっけ、)

紙飛行機折ることになるならあった方がいいかなぁ、なんて思ったりしたけどどう考えても小さな子どもがいる家じゃないし無理だろう。鞄から紙飛行機を取り出す鈴木さんを横目に苦笑いをした。

 + + +

「これが君の家の庭に?」
「う、うん!だからその迷惑野郎を捕まえてほしいの!」

鈴木さんに渡された紙飛行機を様々な角度から見て、何かに気付いたように息を飲む。興味深い、と鈴木さんに向けて言うのと同時に毛利さんが携帯を取り出し、画面を確認した。そこには、沖矢さんが述べるSOSだということと同じ文面が表示されていた。

「誰かが助けを求めているってーの?」
「そう…。どうやら事態は緊急を要しているようです…。もしもあるのなら…」

恐らくは今学校で携帯を扱っているであろうコナン君が思っていることを沖矢さんが述べるのに口角を上げる。

「速やかに見せて頂きたい…」

二人の探偵の息が合うのを見て背中がゾクリとするものを感じながら、私はスマホで紙飛行機のことを調べ始めた。

2018.1.3
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