Marguerite

遊んだ残骸

 
「べ!?」

あまり大きくないイカの飛行機を見ながら鈴木さんが驚きの声を上げた。黒い丸は『べ』を表していることを沖矢さんは説明し、そのイカの形と照らし合わせるとベイカとなり紙飛行機は米花町を意味していると言う。

「ダ、ダジャレ…?」
「まあ、暗号のほとんどは突き詰めればダジャレのようなものですし…恐らくこの紙飛行機は、誘拐されどこかに監禁されている代田社長が飛ばした物…。仮に犯人に拾われたとしても犯人にさえ解けなければダジャレでも何でもOKだと踏んだんでしょう」
「暗号って謎かけみたいなものだしねぇ…」
「でも、代田社長はどこにいるんですか?確か最初の紙飛行機は『SOS』で…次の紙飛行機が『携帯の電波の入らない場所』でしたよね?」

情報を整理するとベイカ帳の圏外の場所に囚われているから助けて、となるけれど、と鈴木さんが言うけれども毛利さんも場所が思いつかないらしく疑問符を浮かべる。しかし沖矢さんは思い当たるものがあるらしく高層の建築物を述べた。

「携帯電話の基地局のアンテナは人口密度の高い地面方面に向けられていますから高い所からではつながりにくい…。しかもつながればつながったで、その高さゆえに複数の基地局の電波を拾ってしまい…携帯電話が少しでも電波郷土の強い基地局に切り替えようとするたえ、頻繁にローミングして結局圏外になってしまう…」

顎に指を当てて冷静に淡々の述べる沖矢さんは、何も知らずに見ると頭のいい大学院生、だろうか。実際はFBI操作局員でありこういう誘拐とかは日本と違いアメリカならば治安的にも多いからある意味では謎かけというのは得意分野なのかもしれない。元の頭の良さもありそうだけれど。
沖矢さんは高層建築物にはホテルとマンションがあり、けれどもベッドメイク等で部外者の出入りがあるホテルに監禁しにくいことを踏まえると米花タワーマンションではないかと言う。それはここからもわりと近く、徒歩で迎える距離である。

(私高木刑事の番号とか入ってないな、)

警察に通報を促す沖矢さんの言葉で自分の携帯を見返すも、会えば挨拶するし話すわりに番号を交換してなかったな、と思う。というかそもそも秀一さん以外とはほとんど使ったことがないのが事実だ。
毛利さんの携帯に着信が入り、その相手は工藤君で聞こえてくる声は焦りがあり走りながらなのか風の音も共に入っている。

(というか、小学校抜け出したんだよね工藤君)

どうやって教室に戻るのかがすごく気になるところである。彼の場合そもそも事件ホイホイだし勢いで飛び出したのもなんとかなりそうだけれど。
電話で毛利さんに説明をし、どうやら毛利さんがその場に行く方向で話がまとまったらしい。毛利さんはバタバタと部屋を後にし、なんやかんや鈴木さんが通報をすることになった。

「まあ現場は彼女と彼に委ねましょう…。推理好きの金一君に…」
「……沖矢さん何か食べます?昼食べてないでしょ」
「じゃあ、適当にお願いします」
「ホントに適当に盛りますね」

電話をし始めた鈴木さんの妨げにならないような声量で話す。何やかんやでお昼を食べ損ねたのでそれなりに空腹感はある。頭を使った沖矢さんならなおさらだろうか。にしてもこの家は冷蔵庫に何が入っているんだろうか、と思いつつ背伸びをしていると沖矢さんの手が私が遊び半分で作った折り紙を手に取った。

「鶴にしては、変な形ですが」
「脚付き鶴。我ながら気持ち悪いもの生成したなって思います」
「こんなものもあるんですねぇ…」

理解しがたい、とでも言うように沖矢さんは脚付き鶴の脚を広げる。イカは知ってるのに脚付き鶴は知らないらしい。遊び半分で作っただけですけど欲しければあげますよ、と適当に言ったら貰っておきますね、と言われたので多分アレは飾られるのだろう。寝室に飾られる脚付き鶴の気持ちにもなってもらいたいものだと思いつつ私は部屋を後にした。

2018.3.8
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