暗い、闇の中。頭の中がモヤモヤとして、意識がハッキリとしない。私は、何をしていたのだろうか。
「……!………っ!」
誰かが、呼ぶ声がする。目を開けなければいけないのに、何だか体がとても重い。とても深く眠っていたような気がするのに、スッキリとしない。
何かを、しなければいけなかった気がするのだけれどー…。
「呉羽姉ちゃん!!!」
「っ、…」
叫ぶようなコナン君の声に、ようやく意識がハッキリしてくる。とても気だるい体を無理矢理起こせば、そこはどこかのホテルで。
(私は、何をしていたんだっけ……)
頭を抱えながら、考える。何かとても大切なことを忘れている気がする。
「呉羽姉ちゃん、大丈夫?」
「何、が……っ」
コナン君の質問の意味がわからずに、首を傾げながらコナン君を見た。そのときに、視界の端に入ったものはー……。
「広田、さん……?」
壁に背を預けて血を吐き息絶えているのは、大男の広田明。
そうだ、どうして忘れていたんだ。ホテルで明美さんに声をかけて、自首をお願いしたけれど拒否されて。確か、薬のようなものを嗅がされて……。
あまり働いてくれない頭が、徐々に鮮明になってくる。恐らく、意識を失った明美さんが私をこの部屋に転がしたのだろう。
そうだ、私はこんなとこでゆっくりしている場合じゃないんだ。
コナン君と、毛利さんが何かを言っていた気がするけど今はそれどころじゃない。
私は明美さんを追いかけるべく、部屋を飛び出した。
+ + +
ホテルに停めてあった自分のバイクに跨る。タクシー乗り場に、明美さんの姿は見えない。
(まさか、もう出た……?)
ヘルメットを被りながら、状況を把握する。確か原作では、明美さんがタクシーに乗るのを見て毛利さんとコナン君が追いかけるはず。原作通りに進んでいるなら、ここで待ち伏せができるだろう。あくまで、原作通りに進んでいるなら。
ちょっとした時間差で彼女がもう出ていて、ここで待ちぶせをしていたら今までのことが水の泡だ。事前に彼女が向かうであろう港は把握している。だったらもう、考えている暇はない。
(吉と出るか、凶と出るか……)
バイクを、港へと走らせる。ホテルから彼女が向かうであろう港はさして遠くない。何度も港に向かい、極力信号のない裏道も把握している。あとは明美さんがいるかどうかだ。
しばらくバイクを走らせ、港へと到着する。自分の脚で走るよりもバイクを走らせて探した方が断然早い。が、ひと通り辺りを見回してもそれらしい姿は無い。まだ組織と接触をしていないことに安堵したとき、港に一台のタクシーが現れた。中から出てきたのは、大人びた女性。
「明美、さん」
原作で見たままの彼女が、私の目の前にいた。目の前の明美さんは少し驚いた様子を見せたけれど、こうなることが分かっていたかのように息を吐く。
「まだ、少しだけ時間があるの。話をさせて貰ってもいいかしら?」
「私、に…ですか?」
「えぇ」
明美さんは一度目を伏せ、意を決したように口を開いた。
「大くんのことで、ね」
2014.07.14
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