「それにしても、知らない番号から電話がかかってきたときは驚いたよ」
「知らない番号?」
部屋に着くなりベッドに転がった世良さんは携帯を扱いながら番号を見る。世良さんの横にベッドに腰かけるように座れば、世良さんは笑いながら私の髪に触れる。
「男の人の声でさ、今すぐホテルに戻れって」
「それで、ホテルの方に戻ってきたの?」
「あぁ。もしかしたら、呉羽のことかもしれないって思ってね」
腕を引き寄せられて、私は世良さんの上で横になる。そのまま世良さんは横に転がって、二人はベッドの上で並んで横になった。
世良さんの手が、私の頬をなぞる。
「何も、されなかったんだよな…?」
不安げに私を見つめる瞳。きっと世良さんは私の身に何があったかは知らなくて、嫌な予感だけが彼女を襲うのだろう。
私が黙っていれば彼女にはわからないのだろう。けれど、それはすごく残酷なことなのではないのだろうか。信用していないと、言っているようなものだ。
世良さんの手を取って、私はその手に自分の指を絡ませる。
「誘拐……されました」
「…………は?」
顔をひきつらせて、目を大きく開きながら、彼女は声を漏らした。そんなことなんて、予想してなかったのだろう。
少し縛られたりはしていたけれど特に危害があったわけじゃないし、そもそも優作さんが介入したことによりすでに捕まっている。私は世良さんの手をさらに強く握る。
「でもね、何かされたわけじゃないし、犯人たちももう捕まったって…!」
「そういう問題じゃないだろう…!!」
世良さんに手を引き寄せられて、私は転がったまま世良さんの胸へとダイブ。ぎゅう、と音がしそうな程に強く抱きしめられる。
「せ、世良さん…?」
「………僕、今なら秀兄の気持ちがわかるかも」
「え、赤井さんの?」
「危なっかしいのに行動的で、手にもて余すって」
「……誉められてる気がしない」
世良さんの腕の中で拗ねるようにそっぽを向けば、世良さんは『ごめんごめん』と笑いながら謝る。そのふとした表情が、とても赤井さんに似ている気がした。
「どうかしたのか?」
「んー…?…何でもない」
「嘘だ、絶対何か隠してる」
「じゃあ、内緒」
『そういうとこ、ずるいなぁ』と、隣で世良さんが呟く。私から離れて転がる世良さんを、私は上半身を起こして見下ろす。
「ねぇ世良さん。私に英語、教えてほしいな」
「英語を?」
「日常の会話と読み書き程度は出来るようになりたいかな…。本当は、日常会話とかじゃなくてちゃんと話せるようになるといいんだけどね」
「……いいよ、ちゃんと喋れるまで教えてあげるよ」
私の真意に気づいたのかそうではないのか、彼女は八重歯を見せるように笑った。
2015.01.19
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