Marguerite

勇気をくれたのは、

 
ドンッ、と聞きなれない銃声が響く。実践では初めて撃つ拳銃。その銃の反動には慣れることはなくて、コレを使いこなす警察の人やFBIの人たちはやはりそれなりに鍛えていることが実感出来る。
だが、まだ安堵することは出来ない。拳銃を適当に投げ捨てて、バスの窓を見る。このあとコナン君は哀ちゃんを抱えてひび割れた窓ガラスをぶち破って外に出てくる。助走と爆撃の反動で、このまま落ちれば小学生の身体にはかなりの衝撃になるだろう。

(一か八か…!)

二人を受け止めるべく、構える。刹那、コナン君と哀ちゃんが出てくるのと同時に爆弾が爆発する。一瞬コナン君が私を見て目を見開いていたけれど彼に今の状況を止める方法なんてものはない。

「っ……!!」

体当たりされるかのように飛び込んできた彼らを抱えて、私は後ろへと倒れる。子供二人といえどさすがに40kg弱ぐらいにはなるのだろう。厚底を履いていた自分を少しだけ恨みたくなった。

「二人共、無事?」
「お前……」

さすがに哀ちゃんは私と視線を合わせてはくれないが、コナン君は驚いたように私を見る。哀ちゃんの足元を確認すれば、脚にはべったりと血が付けられている。それを見て目を見開き、起き上がりながら背後にいる人に声をかけた。

「高木刑事!」
「っ、え?」
「すみません!!この女の子怪我してるみたいなんで病院に連れて行ってもらっていいですか!?」
「え?」

一瞬、コナン君がこちらを見たけれど意図が読めたらしく合わせるように口を開いた。

「事情聴取はボクらで受けるからさ!!」
「あ、あぁ…」

戸惑ったように高木刑事は哀ちゃんを抱える。

「逃げるなよ、灰原…」

私から離れて自らの足で立ったコナン君が呟いた。

「自分の運命から…逃げるんじゃねーぞ…」

高木刑事はコナン君の言葉の意味が分からずに疑問に思っているみたいだけれど、コナン君は気にする様子もなく彼女を早々に病院に連れて行くように促す。彼女を、この場から離すために。
サイレンを鳴らしながら遠ざかっていく車を見ながら、座り込んだままだった地面から立ち上がる。

(……どうやってこの場から逃げようかなぁ)

先ほどからヒシヒシと伝わる鋭い視線。誰のものか、なんて言わなくても分かる。自分でも滅茶苦茶なことをした自覚はある。勿論、今鋭い視線を向けてくる彼もそれは見ていた筈だ。

(逃げたい。ものすごく逃げたい)

するり、とコナン君たちの元を離れて一人になる。それを待っていたとばかりにコツリ、と一つの足音がこちらに向かってくる。その音に自身の肩が揺れたことには、気が付かないフリをしていたい。

「……何か、言うことはあるか?」
「不可抗力です」
「ホー……」

背後からかけられた声。振り向くことはなく、間髪入れずに答える。
こんなことになったのはそもそもバスジャック犯がバスジャックなんてものをしなければ起きることはなかったんだ。そうだ、コレは不可抗力だ。
はぁ、と息を吐くのが聞こえた。同時に、腕を引かれて引き寄せられる。けれど、察したように赤井さんは私の顔を自身の右の掌で覆う。

「無茶をするなと、言っただろう」
「……犯人のスキーウェアを着たままの赤井さんはノーセンキューです」

再度、息を吐く声が聞こえた。手を離されて、バサリという音と共にさらに強く引き寄せられる。

「…呉羽」

名前を呼びながら手を取られ、指先に軽く口付けられる。

「っ、ここ、外ですよっ……!!」
「それがどうかしたか?」
「もうっ…!!事情聴取行きますよ…!!」

室内ならともかく、外でするというのか…!コレだからアメリカの人間は困る。心臓がいくつあっても足りない。
赤井さんの腕を掴んで、佐藤さんが案内する車へと乗り込むべく向かった。

2015.02.03
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