Marguerite

メープルシロップかき混ぜて

 
「そういえば、あの刑事とは知り合いか?」
「刑事さんー…?」

あとは寝るだけになった私と赤井さんは、ベッドに転がりながら他愛もない話をする。と言っても、転がっているのは私だけで赤井さんは上半身を起こして布団を脚にかけている。
赤井さんを見上げながら、あの場にいた刑事さんを思い出す。確かあそこにいたのは、佐藤刑事と高木刑事。

『――高木刑事!!』

「………あ」

あの時、私はとりあえず哀ちゃんをこの場から離れさせようと思っていた。そのとき、確かに私は彼の名前を呼んでいた。高木刑事の名前を。

「んー……。まぁ、大丈夫、だと、思う」
「歯切れが悪いが大丈夫か?」
「大丈夫だ問題ない」

勘の良い佐藤刑事じゃないから、多分。ダメだ、私の上瞼と下瞼はお友達になりたがっている。考えがまとまらない。

「眠いか?」
「…………眠くないもん」

私に追い打ちをかけるように、赤井さんが一定のリズムで私の頭を撫でる。規則正しく撫でられるソレに、身を任せたくなりながらも首を横に振って目を覚まそうと試みる。

「……電気、消すぞ」
「んー……」

無駄なあがきで赤井さんの服の裾を掴むけれど、赤井さんはその手を取って問答無用で電気を消す。確かに既に日付は変わっているけれど、普段なら起きていられる時間だ。それなのにこんなにも眠いのは、やっぱりバスジャックのときの緊張からなのだろうか。
うつらうつらと微睡む中、赤井さんが小さく息を吐くのが聞こえた。少し呆れるようなその音に赤井さんを見れば、フッ、と笑って赤井さん自身も転がって私を引き寄せる。器用に私の頭の下に自身の腕を敷いて、腰を引き寄せながら私の額に口付けた。

「甘えたいときぐらい、素直に言え」
「………夢みたい、なんだもん」
「夢?」
「この状況……」

赤井さんの胸元に擦り寄りながら、ぽつりと呟く。赤井さんが私を見てくれるなんて、想像しただろうか。一方的な気持ちだと思っていたから、この手が離れてしまうのではないかと思う自分がいる。
何も言わない赤井さんを見ようとしたとき。自分の身体が転がされるように動いたのと同時に、視界には天井と赤井さんの顔。

「試してみるか?」
「えっ……」
「夢かどうか、な」

微かに弧を描く口元。赤井さんの言葉の意味が分からずに赤井さんを見上げる。
返事をしない私を見た赤井さんはソレを肯定と取ったのだろうか。くしゃり、と私の頭を撫でてその手で頬をなぞる。

「赤井、さ……」
「そんな、怯えた顔をするな。痛くはしない」
「えっ……んっ」

顎を持ち上げられて、荒々しくキスをされる。優しくされるものとは違う、荒々しいソレは角度を変えて何度もされる。

「っ、ぁ……」

呼吸の仕方が分からなくなって、酸素を求めて口を開く。それを狙っていたかのように、するりと舌を絡めとられる。そういう経験が、無いわけじゃない。元の世界ではそれなりの年齢だったし、そういうことに至ったこともある。
けれど、それはこちらに来る数年前から縁がなくて、随分と久しい感覚だった。

「っ、ふ…ぁ……んぅ、」

自身の口から漏れる甘い声。口内を犯すように歯列をなぞられ、絡めて、吸われる。
キスをしながら赤井さんは同時進行で私の部屋着のチャックを開け、その下に着ているタンクトップの上から私の身体のラインをなぞる。下着をしていない身体は無防備で、いとも簡単に赤井さんの手の侵入を許す。
ゾクリ、と身体が反応することを隠すように、私はシーツを握りしめた。

2015.02.06
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