「どうせなら総司。男心的にはどうなんですかこの私の状況」
「潔すぎやろ」
「恋人と名乗っていいのか不安なんだもん」
あれ、でもアメリカの方ではそもそも日本みたいにハッキリ告白して付き合うとかいうものじゃなかった気がする。だから片方が勘違いしててプロポーズとかしてそんな関係じゃないでしょう?とか言われることがあるって聞いたことある気がする。うん、するだけ。
赤井さんもFBIというからには多分アメリカ暮らしは長いほうだ。だったら、やっぱりそういうことなのだろうか。
「男からしたらアレやろ。信頼した上で分かってくれるやろっていうのがあるんやないの?」
「そうなの?」
「俺はその男やないから分からんけど…。年上?」
「…結構上かな」
ちょっと、年齢まで言うのは避けたいところ。なんか、年齢を言うと赤井さんがロリコン扱いをされそうというかなんというか…。でも突拍子もなく私が質問をしたのに総司はまじめに考えていてくれている辺り優しいなぁと思ったり。
「やっぱそういうのってそんなポンポン言うもんでもないやろ。それか、聞いてみるんが一番やな」
「……やっぱり?」
「呉羽はその男、名前で呼んどるん?」
「私が呼ぶのは苗字デス……」
なんか総司が先生か何かに見えてきて。なんとなく、総司は胡座で座っているけれど私はその隣で正座をする。
「…俺のときは普通に呼んだやん」
「いや、ほら、総司は友達だし、ね?好きな人に対しては恥ずかしいっていうか…」
「じゃあその気持ち、後ろに向かって言うてみ?」
「え、いるの!?」
赤井さんには少し遠出をするとは言ったけれどこの大会に来るなんてことは言っていないのに何でいるのかと思って後ろを向けば、そこにいたのは少し距離はあるけれどただのテレビ局で。…これは所謂テレビに向かってなんたらとかそういうつもりだったのだろうか。
ジロリと総司を見れば、肩を震わせて笑っている。
「もうっ…!いるかと思った…!!」
「ホンマ呉羽おもろいな。ここまで引っかかるとは思わんかったわ」
「すごく勘がいい人だからときどき心読まれてるんじゃないかなっていうところあるから…」
「でも、大丈夫やろ。寝とるときにそないな痕残すぐらいやし、絶対愛されとるで。それとなく聞いたらええやん。絶対無いやろうけど万が一フラれたら慰めたるわ」
「……ホントに京都まで押しかけるからね」
「おー。待っとるわ」
畜生。ちょっとムカッともしたけどスッキリもした。決勝戦まではまだ少しある。立ち上がったときに総司にどこ行くん?って声をかけられたからお手洗い、とだけ返して体育館を出る。いや、さすがにこのまま帰るつもりはないです。そこまで非常識ではないつもりだ。
確かトイレは別館の方にあったはず。顔の熱を冷ますことも含めて、私は別館に向かった。
+ + +
(…………完全に忘れてた)
総司に気を取られて、完全に忘れていたことがある。それは、この体育館裏の別館で殺人が起きたということだ。そして、決勝前から決勝戦中の時間帯にはコナン君を始めとして毛利さんとそのお父さんがいるということ。
服部君とはすれ違ったけれど、顔が知られているわけでもないし難なく突破。多分時間的にはもう決勝が始まる。視界の隅にプールの方に向かうコナン君たちが見えたけれど彼らの視界に入らないようにして体育館に戻る。そこでは、沖田くんが決勝の為にか準備をしていた。
「遅かったやん」
「…キスマーク、ホントにあるのかなって思って確認してた」
「あったやろ?」
「首じゃなかっただけマシかなぁ……」
首にされてたら私は羞恥で死んでいた。気づかれるかどうかは別としてキスマークつけて新幹線に乗ってここまで来たと思うともう帰れない。
「向こうは服部もおらんしすぐ試合終るやろ。ゆっくり見とき」
「とか言って手こずったら笑ってあげるよ」
「よう言うわ。見とき、すぐ終わらせたるから」
+ + +
(ここまであっさり勝つのもどうなの)
総司が負けず嫌いなところは工藤君に似ているような気がする。服部君には非常に申し訳ないが、恐らく彼の中では剣道よりも事件の方が優先順位が高いだろう。喜ぶ剣道部員たちの隣で立ち上がり、伸びをする。大丈夫、足は痺れていない。
「あ、閉会式見てくやろ?」
「ん。閉会式終わったらすぐ駅に行かなきゃいけないけど」
「じゃあ送ったるから、上で待っとき」
「ありかとう。一応分かりやすそうな場所にはいるね」
総司にそう言って、私は観客席の二階へと移動する。適当に空いている席を見つけて座れば、会場は徐々に閉会式へと入っていく。
上から見ていても表彰される総司たちは嬉しそうで、成り行きで応援することになったのではあるけれど、私の方まで頬が緩む。懐かしい青春時代を思い出しながら、閉会式を眺めていた。
2015.02.26
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