微睡む意識の中、心地の良い温もりを感じながら目を覚ます。もぞもぞと布団の中で身体を動かす。お腹にまわされた手はしっかりと組まれていて、背後からは静かに寝息だけが聞こえてくる。
(抜け出すのは無理そうだなぁ……)
少しだけ身動いで抜けだそうと試みるも、組まれた手は解けそうにない。刹那、首筋に埋もれた顔が少しだけ動いた。
「秀一、さん……?」
「………呉羽、」
小さな声で呼ばれた名前。猫のマーキングのように擦り寄ってくる動作に起きているのかと彼を見るも、動く気配は無い。もともと眠りが浅い彼がここまで深く眠りに落ちているのは、かなり珍しいことだ。折角の休日だし、このままゆっくりしていてもいいだろう。
心地の良い温もりを感じながら、瞼を落とした。
+ + +
頭を撫でられる感触に、微睡んでいた意識が徐々に戻ってくる。どれぐらい、寝ていたのだろうか。身動いで時間を確認しようとしたとき、私の頭を撫でていた手が腰を引き寄せた。
「わっ……」
「まだ、いいだろう」
額にキスをされて、秀一さんに腕枕をされる。どうやら彼はまだベッドの中にいたいみたいで、私の頭を撫で始める。
「今日は、予定何も無しですか?」
「……いや、まだ時間があるだけだ」
秀一さんが枕元にあった携帯を開いて時間を確認する。私も時間を確認したくて携帯に手を伸ばそうとしたけれどその手はするりと秀一さんに絡めとられる。
「時間知りたいんですー…」
「俺は、もう少しこうしたいんだがな」
フッと笑いながらするりと腕枕をしていた手を引き抜いて私の顔の横に肘をつく。秀一さんと向き合うように身体を動かせば、視界は秀一さんと天井だけになって。
わざとらしくリップ音をさせながら額や瞼に落とすキスを受けながら、頬を緩めて秀一さんの首に腕をまわす。
「珍しく、積極的だな」
「秀一さん程じゃないですよ」
お互いに笑い合って、額や瞼以外に頬や鼻梁、唇、首筋、いろいろなところにされるキスに身を委ねる。好きな人に求められるのは嫌いじゃない。秀一さんから触れられることに頬を緩ませていると、私の頭上から電子音が響く。
「………………」
「………携帯、鳴ってますよ」
我に返る、とはこのことなのだろうか。秀一さんは私の首筋に顔を埋めたまま微動だにしなかったけれど、私の言葉で小さく息を吐いてようやく携帯を手に取る。
(ちょっと、残念……)
身体を起こして、背伸びをする。ベッドから離れた秀一さんが何を話しているのかはわからないけれど、さっき"まだ時間があるだけだ"と言っていたから、FBIの人だろうか。
バスジャックと大阪の話という自分の近くで起きた事件を思い出しながら、次は何だっただろうかと思考を巡らせる。
「……あ」
そろそろ、ジェイムズさんが誘拐される頃だろうか。でも確かジェイムズさん秀一さんが長髪だと思ってた気がする。じゃあ何だっただろうか。佐藤刑事のお見合い話は関係ないはずである。
どっちにしろ今日は1日家で過ごすことになりそうだ、とベッドから出ようとしたとき、携帯を閉じる音と同時に秀一さんがこちらを振り向く。
「今からお仕事ですか?」
「あぁ。ただ、お前も連れて来いと向こうからの指示だ」
「……はい?」
私の声が、部屋に響いた。
2015.03.10
back