「まだ、何か気になることでもあるの?」
「…いや、なんでもねぇよ」
携帯の画面を見たまま動かなかった俺に、灰原が声をかけた。携帯の画面に映るのは、篠宮へのメール画面。
車の中から俺たちを見ていた男。バスジャックの時の乗客の一人で事情聴取のときに確か赤井秀一とか言っていた。その男の運転する車の助手席に座っていた、篠宮。
確かに、バスジャックのときに隣に座っていた女が見覚えのある顔だと思った。ただ、バスの中ではそれを思い出すことは出来なかったけれども、アレは。あの顔は。
(篠宮だった、ってことか……)
どこか大人びていた同級生。それがもし、本当はもっと大人だったら。俺らと同じように人体実験等で薬を飲んだのだとしたら。何かを探る為に高校にいるのだとしたら。奴らの、仲間だったとしたら。
(まさか、な……?)
疑問は拭えないけれども、同級生を疑うというのも気が引ける。篠宮への疑いは晴れていないが、頭の片隅に置いたまま携帯を閉じた。
+ + +
「悪い、待たせたな」
「あら秀。呉羽なら席外してるわよ」
「……………何でお前がいるんだ」
「呉羽がいないのは、不満かしら?」
てっきり呉羽がいるものだと思って声をかけたら、そこにはジョディが座っていた。話を聞くと先に仕事が終わって呉羽と話していたらしい。
「あれ、お仕事終わったんですか?」
ジョディとそのまま話し込んでいると後ろからかけられた声。振り向けばそこには呉羽が思ったより早かったですね、なんて言いながら近付いて来る。
「随分と丸く収まったのね」
「さっきジェイムズさんにも言われましたよー」
「あら、そうなの?」
「秀一さんとお迎えに行ったときに」
「………呉羽」
女同士の話は長い、というがこのままだと本当に長引きそうだったので呉羽の名前を呼ぶ。若干拗ねたように返事をしながら椅子に置かれていた袋を取る。渡された現場は見ていないが、恐らく先ほど言っていたお土産なのだろう。
「じゃあ呉羽、今度は秀がいないときにでもお茶しましょ」
「連絡しますね」
お互いに手を振り合うのを横目で見ながら、呉羽の手を引いて部屋を後にする。
「どちらかと言うと、秀のべた惚れなのねぇ…」
部屋の外に出た俺には、ジョディのその言葉が聞こえることは無かった。
2015.03.15
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