私の言葉に、秀一さんは話を聞くつもりになったらしい。一度だけ、軽くキスをされて私の隣に横になる。私に腕枕をして、髪を梳くようにしながら撫でる。
「きっかけは、私が秀一さんのあの言葉の意味を聞いたからなんですよ」
+ + +
ジョディさんんがメモの上に書いた、一見英語のようにも見える英語の羅列。それはよく見ると英語ではないらしく、綴りが違うように見える。けれども私の中で音として残っている発音と照らし合わせると、なんとなく、一致するような気がした。
「私がこの言葉を直接聞いたわけじゃないから発音を聞いて推測になるけれど…。多分、こういう文章になるんじゃないかしら?」
ジョディさんが書いていたメモを渡される。やっぱり、何度見てもコレは英語ではないようだ。
「…ジョディさんは、この文章の意味が分かるんですか?」
「英語じゃないから、完璧じゃないわ。でも、何を言いたいのかは分かる。
それで、この文章の意味と私からの提案、どっちが先に知りたい?」
「……意味を、お願いします。意味を知った上で、提案を受けるか受けないかを決めたいです」
ジョディさんにメモを返すと、そう、と呟いて一拍間を開けてメモに書かれた文章をそのまま読み上げる。聞きなれない、発音。
「『自分の元を離れるな』
……そういう、意味ね」
ジョディさんの言った言葉に、時が止まったような気がした。
「秀は、よっぽど貴方のことが好きなのね」
呆れたような、納得したような、ジョディさんの声。彼女は、どんな気持ちでこの文章を訳したのだろうか。原作では、赤井さんが死んだとされたときに泣いていた彼女。きっと、まだ赤井さんのことは好きで。原作が始まって間もない今は、きっと、まだ好きで。
頬を伝うソレを隠すように、両の手で顔を覆う。
「私に、気兼ねしなくていいわよ。きっとあのとき私と秀が別れなくても、いつか、別れてたわ」
「そんなことっ……」
「呉羽は、優しいのね」
ジョディさんの声が、部屋に響く。優しいのは、私なんかじゃない。ジョディさんの方が、私なんかよりもずっと優しい。
いきなりあらわれて怪しいことこの上なかった私。そんな女を自分の好きな人が監視していると知ったときは、どんな気持ちだったのだろうか。
「私もね、嫉妬しなかったわけじゃないの」
「え……?」
「でも、貴方に会って分かったわ。このコは、私には無いものを持ってるって。私が秀と付き合ってても秀の奥底にあった冷たいところ。このコなら、癒してあげられるんだって」
溢れ出るソレは、止まらなくて。頬を濡らしながら、すべり落ちていく。自惚れても、いいのだろうか。私が、彼の傍にいてもいいのだと。
「貴方に会って、秀は変わったわ」
雰囲気が、前よりもずっと柔らかくなった、とジョディさんが言う。前はもっと近付きにくくて、FBIの中でも、仲間のなかでさえも、怖がる人さえいたと。
「……話を、戻しましょうか」
私からの提案も、悪い話じゃないと思うわ。苦笑いを浮かべながらジョディさんはそう言って、一つのファイルを取り出した。
2015.03.19
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