「貴方の知ってる通り、証人保護プログラムは対象者を守る為にあるものなの」
開かれたファイルの中にある書類を渡される。そこには、証人保護プログラムについての規定や注意事項などの内容が書かれている。数枚綴りにされている中の一番したの書類には、署名と捺印をする欄も。
「コレを受けるというのなら、一定期間、状況によっては一生涯住所などが特定されないように国家最高機密として暮らすことになるわ」
「………私の場合は、一生涯ですか?」
「その可能性は、否定できないわね」
証人保護プログラムの話が一番最初に出たときから気になっていたこと。"私"という存在はここでは明らかに異質なのだから。
「顔は、変えることになりますか?」
「そうね…。ジンとベルモットに顔を知られている以上、より安全性を高めるなら変えることになると思うわ」
もし私がここで証人保護プログラムに同意した場合、監視下に置かれるということになり、日本に訪れる機会は格段に減る。また、顔を変えることによって今まで会った人たちには"私"が"私"であるという認識をしてもらえなくなるということ。
「FBIとしての立場から見たら、証人保護プログラムを受けることを勧めるわ」
ジョディさんの言葉が、突き刺さるような感覚だった。確かに、ジンとベルモットに顔を知られているとなると、あの二人が私を殺すことなんて簡単なことだ。でも。
(自分の傍を離れるな、か……)
あの言葉の意味を知った以上、余計に離れがたくて。冷たい目を向けられたというのに、彼の傍にいたいという気持ちがある。
「でも……女という立場から言うと、できれば秀の傍にいてほしいの」
「えっ……」
困ったように、眉を下げて笑うジョディさん。
「さっきも言ったけれど、呉羽に会って、秀、変わったから」
「そんなこと…」
「あるわよ。秀が持ってた奥底の冷たい部分、呉羽に会って、丸くなったわ。アレは、私じゃダメだった。呉羽じゃなきゃ、ダメだったのよ」
「っ……」
止まったと思った涙が、また頬を伝う。
「ジョディさん、どれだけ私を泣かせたら気が済むんですか……」
「ホントのことだもの。それに、私をフッたんだからこれぐらい許されると思わない?」
「それが本音ですか……」
「半分ぐらいね」
クスリと笑いながらそう言って、またファイルの中から別の書類を取り出してそれを確認する。
「それで、私からの提案。もし秀が一度でも呉羽を引き止めたら証人保護プログラムの話はお流れ。引き止めなかったら、そのまま続行。どう?」
にっこりと笑うジョディさんに、時が止まったような気がした。
2015.03.21
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