Marguerite

歓声が聞こえない


秀一さんが家に来ないという日は、比較的テレビが点いていることが多い。ついている、と言っても実際テレビの前に座ってみることは少なくて、実際は家事をしながらときどき視線をそちらに向ける程度なのだけれど。
その中で、たまたま気になったニュース。米花町でパレードをやるというもの。サッカーの試合が勝ったかららしく、その日は交通規制が云々と番組のキャスターが言っている。

(パレード……?)

何か、引っかかる。パレード関係で何かがあったような気がするのだけれど、一体何だっただろうか。
サッカーとパレードを頭の中で結びつけても、それが何であったのかが思い出せない。とりあえず頭の片隅にでも入れておくか、とテレビを消した。

 + + +

パレード当日。頭に引っかかるモノがある、ということはそれが大きいか小さいかは別として何かあるのだろう。正直原作の内容は秀一さんが出ていたところは徹底して読んでいたから結構覚えているのだけれどそれ以外は曖昧になっているところが多い。
でも何故コレを忘れていたのだろうか、私は。

(コレは、ポストに郵便屋さんが来ない云々の話か……)

パレードの後ろの方で、パレードが見えなくて困っている子供たち三人。それを隣で見ている二人の子供。言わずもがな、少年探偵団たちだ。
爆弾の話もセットだったこの話、関わった方が刑事さんたちとの繋がりが出来るのも心強い。秀一さんはあまり私が危ないことをするのを好まないけれど、私としては今のうちに人脈を作っていたいところもある。死にたくは、ないのだけれど。

(あ、でも私コナン君には疑われてるかも)

ジェイムズさんが誘拐されたとき、秀一さんの車の助手席に座っていた私。恐らくコナン君もそれを見ているハズだ。
でもコナン君は今一人なわけじゃないし、何より哀ちゃんがいる。変なことは聞いてこないだろうと踏んで、彼らに近付いた。

「見えないなら、抱っこでもしようか?」
「呉羽っ……の、姉、ちゃん、何で…」

驚いたように私を見るコナン君。うん、この感じ堪らない。私の正体を知りたくて仕方なくて、探りたいっていう顔をしている。

「バスジャック事件以来だねー」
「あれ、やっぱり呉羽姉ちゃんだったんだ」
「まぁね。赤ずきんちゃんも久しぶり」

哀ちゃんに向けてニッコリと笑えば、彼女は冷めたように私を見る。警戒はされているもののあからさまに顔を顰めたりしないということは、私からは嫌な臭いはしないのだろう。惜しい、どうせなら組織の人間だとでも思って貰いたかった。主にコナン君に。

「今日は、一人なの?」
「どうせ友達少ないよ」
「そ、そういう意味じゃないんだけど…」

コナン君が、焦ったように苦笑いを浮かべる。多分、秀一さんが一緒ではないかを聞きたかったのだろう。生憎ながら秀一さんは仕事で、そもそも仕事でなくてもこんな人が多いところに付き合ってくれるかが問題だ。というか、いたら私が自由行動出来ない。

「それよりいいの?他の子たちあんなことになってるけど」
「アイツら……」

私が指差す先には、ゴミ箱の上に乗る子どもたち。何だかんだ言いつつ、面倒見はいいよねコナン君。そんなコナン君が呆れたように子どもたちの方へ行くけれど、もう一人の少女は動くことはなく私の隣に居た。

「……貴方、何者なの?」
「私?」
「えぇ。バスジャックのとき、拳銃で後ろの窓ガラスを割ったのは貴方でしょう?」
「まぁ、目の前で人が死ぬなんて見たくないからね」

ジョディさんが持っていた犯人が使っていた銃を借りて割った窓ガラス。実践では初めてのソレは、できれば人に向けたくないと思ったものだ。
隣に立つ哀ちゃんが、睨むようにして私を見る。

「初めて銃を使った場合、いくらちゃんと構えたつもりでも至近距離ならともかく遠距離の場合は弾がちゃんと当たらないものよ。それが、数メートル離れていたはずの貴方が撃った拳銃の弾はちゃんと窓ガラスを割った…。
もう一度訊くわ。貴方、何者なの?」

2015.04.04
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