Marguerite

後悔と重い沈黙と

 
「あー……やっちゃった」

あまりにも近すぎた爆風に飛ばされて、派手にこけた。受け身なんてものは取れなくて、それはもう派手に。そして元々爆弾があったのは電話ボックスの中。爆発すれば、当たり前ではあるけれどガラス諸共吹っ飛ぶわけで。
右腕に、ザックリと切り傷が一つ。5cm程だろうか。その傷の周りは、擦り傷のようになっている。こけた先にガラスが吹っ飛んでザックリと切れたのだろう。

(バレたらマズイかな、コレ……)

とりあえず出血を抑えるべく腕を心臓より高い位置に上げておく。そのまま軽く腕を揺らしなから水道を探す。辺りを見回せば、少し離れたところに水道があるのを見つけたのでしゃがんで極力心臓よりも高い位置を保ったまま流水に当てる。
通報した方がいいだろうか、と思ったけれど、あの爆音だと他の人間が誰かしら通報しているだろう。通報していないとしても、パレードで警察の人は辺りにいたはず。気付かない方が問題があるだろう。それよりも。

(警察が来る前に逃げよう……)

幸いなことに傷は結構大きいのだけれど深さは無いらしく痛みは殆ど無い。薬局に行って応急処置用の物を買おう。
辺りに私の他に負傷した人がいないことを確認して、公園を離れた。

 + + +

(思っていたよりもしっかり手当されてしまった……)

薬局に行って怪我を見せたところ、その場に座らされて二人がかりで処置をされた腕を見る。切り傷に消毒液をかけたりしないことは知っていたけれど、最近では湿潤療法なるものをやるらしい。
片方が必要なものを店内から探して持ってきてもう片方が処置をするというあまり見ることがない光景に苦笑いしたのはここだけの話である。
しっかりと包帯が巻かれているそれを見ると、痛みは既にないのだけれど痛々しいものがある。長袖だから、服を捲らなければ目立つことはないのだけれど。
次は少年探偵団たちがポスト巡りをするはず。郵便強盗たちが強盗をするであろう郵便局も、すでに把握している。

(コナン君は、博士と一緒だったっけ……)

哀ちゃんが探偵バッジでこちら黒ずくめの女っていうのが面白かった。元太君も中々のものだったけれど。
一回コナン君にも話しかけようと思ったけれど、一人ならまだしも博士がいるのにちょっと危ないだろうか。もしかしたら、私が怪しいということは博士にも伝わっているのかもしれないけれど。

郵便局前にあるポストに寄りかかるようにして待っていれば、現れた人影。子供と大人の人影は、片方はほんの少し前に別れたコナン君で。博士と一緒にポストの中の回収時間を見に来たのだろう。

「回収時間は16時30分だよ、小さな探偵君?」
「っ、何でここに…!」
「理由は同じだよ。私もわりとポストの近くにいたのに回収車を見ていない。もし事故や工事がないとすれば、回収車に何かあったとしか考えられない。そして郵便局はパレードのコースから離れている…。きっと、コナン君も同じ推理でしょう?」

私の言葉に、コナン君が年にそぐわない笑みを浮かべる。原作を知っている私はちょっとずるいのだけれど、考えることは一緒のようで。
2人で口元に孤を描いたまま、これから強盗が入るであろう郵便局に視線を向けた。

 + + +

(さて、秀一さんが私の家にいたらどうするかな…)

危ないことをするなと散々言われている以上、この切り傷を見られるのは宜しくないだろう。というか怒られる、絶対怒られる。
いっそ腹括って帰るか、と思い始めた頃、誰かが私の腕を掴んだ。

「……帰り道はあっちだよ、コナン君」

私の腕を掴んだのはコナン君で、他には誰も居ない。大方、私が一人になるのを狙っていたのだろう。
わざとらしく"コナン君"を主張するように言えば、私を見上げる彼は猫を被ったものとは違う、犯人に対峙するような目をしていた。

「お前…どこまで知ってんだ?」
「……質問の意図が分からないな。それは、何に対してかな?」
「俺や灰原のことだ。今回の事件だって、全部先回りしてただろ」

さすが主人公、と言ったところだろうか。チートすぎるぐらいに洞察力がある。実際は彼が疑うのをわかっていながらあえてそういう行動を取ったところもあるのだけれど。
口元に孤を描いたまま、コナン君に向かう。

「ヒントは、与えたはずだよ。私はただ、愛してる人を失いたくないだけだから…もしも貴方がその人の敵だと思うような行動をすれば、私は君と同じ行動をとるよ。手始めに、幼馴染かな」
「テメェまさか蘭をっ…!!」

「私は、毛利さんだなんて言ってないのだけれど?」

コナン君が目を見開いて、焦ったように私を見る。最も、コナン君が秀一さんに対して敵となることは無いし、そもそも近い未来協力する仲だ。分かってて言う辺り性格が悪いとは思うけど焦るコナン君可愛いです。
どうやらコナン君は私のことを完全に敵と見ているらしく、自身のつけている時計へと手をかける。

「……それ、麻酔銃でしょう?」
「なっ……!」
「大丈夫だよ、私の愛した人の敵にならない限りは私は貴方の敵にはならない」

よっぽどのことが無い限り、味方として動くこともないのだけれど。
哀ちゃんとは仲良くなりたいけれどこのままでは暫く難しそうだ。個人的には季節外れのハロウィンパーティーで是非打ち解けたいけれどどうだろうか。
そのときには秀一さんの正体が目の前に立つ彼にバレる。そして同時にきっと私の事もバレるのだろう。

「またね、コナン君」

コレ以上なにか聞くつもりはないのだろう。何も言われてこないのをいいことに、私は無理矢理会話を終わらせた。

2015.04.22
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