大きな音を立てて、もう一度扉が開いた。音の大きさなのか、気まずさなのかどちらか分からないけれど、私の身体がビクリと揺れる。
けれど秀一さんはそんなことお構いなしに私の左腕を掴んで自身と向き合わせるように私の身体の向きを変える。キャミソールを着ていたのが、せめてもの救いだろうか。
「あ、の……」
私はどちらかと言えば寝るときはノーブラ派で。よって、今下着は身につけていない。見えるわけではないけれど、なんとなく恥ずかしくて秀一さんに声をかけるも目の前の彼は私をじっと見るだけで何も言葉を発しない。
「……やっぱりな」
「え?」
ぐい、と秀一さんが私の右手首を掴んで傷を確認する。まだ包帯をしていないソレはラップで覆われているだけで、痛々しい傷口が丸見えだった。
(さっきの一瞬でコレに気付いたの…!?)
あの一瞬だけなら絶対に気付かないと思ったのに、どれだけ観察力がいいんだこの人は。そう思っていると、秀一さんが目を合わさせるように両の手で私の顔を持ち上げる。
「この傷、何があった?」
「ちょっと派手にコケただけですけど…」
嘘は、言っていない。秀一さんも元から私が素直に言うと思っていないのか、呆れたように小さく息を吐く。ふいに秀一さんの左手が私の顔から離れた、と思う。その時。
パンッ、と軽く秀一さんに頬を叩かれる。
「今日起きた爆弾事件とは、無関係か?」
叩いておいてそれを聞く辺り知ってるんじゃないですか、と言いたいけれど言ったら口論にでもなってしまいそうなので黙って秀一さんから目を逸す。が、それを許さないように近い距離に顔を近付けられる。
「あまり動くなと言っておいたのを、忘れたか?」
「覚えては、いますよ」
いろいろと言いたいことはあるのだけれど、言葉にならなくて。秀一さんも同じなのか、何も言うことが無く私を見る。眉間にしわを寄せて、何かを言いたそうに。
「……半分ぐらい、興味本位で爆弾に近付いたのは…ごめんなさい」
「興味本位、だったのか」
「ん…。でも、怪我するぐらいで護れる命があるなら、私はそれを護りたいよ」
秀一さんの動きが、止まる。どうかしたのかと思い秀一さんに手を伸ばそうとした時、急に秀一さんに引き寄せられて。
引き寄せながらその場に座り込んだ秀一さんに対して、私は中腰で向かい合う。上から秀一さんの顔を見るのが、少し新鮮に思えた。
「俺は、狡いな」
「え?」
「呉羽にいつもこういう思いをさせているのに、自分がするとなると嫌になる」
甘えるように、胸元に顔を埋められる。背中に腕を回されて、私もそれに返すように秀一さんを抱きしめる。
「頼むから、あまり無茶なことはしないでくれ」
「…約束は、出来ないですね」
「……そこは嘘でもいいから約束してくれ」
「約束したら、約束しただろうって言うじゃないですか…」
「当たり前だ」
お互いに一歩も引かない話に、お互いに困ったように小さく笑みを浮かべる。お互いに、お互いが危ないことをしてほしくないのは一緒なのだろう。
「呉羽、」
名前を呼ばれて秀一さんを見れば、背中に回していた手の片方で、髪に触れられる。梳くように触れるその手を取れば、指を絡ませるように握られる。私がその手に意識を向けているともう片方の手で頬をなぞられ、キスをされる。
「っ、ん……」
私の存在を確かめるようにされるソレに身を任せていれば、徐々にエスカレートして。私が酸素を求めて小さく口を開けば、慣れたように舌を絡められる。逃げようとしても後頭部が抑えられていて逃げることは敵わなくて。
「ぁ…ふっ、」
水音が、脱衣所に響く。お風呂場がすぐ隣なせいかいつもより反響している気がして、なんとも言えない気持ちになりながら秀一さんの肩を掴む。
刹那、秀一さんが勢い良く離れた。
「っ…すまない、」
手で顔を覆って、顔を見せないように謝罪をされる。何を謝罪されたのか分からずに首を傾げると、私の様子を見た秀一さんが再度口を開く。
「歯止めが、効かなくなりそうだったからな…」
照れたようにそう言った秀一さんが何故だか可愛く見えて。クスリと笑って、甘えるように秀一さんに抱きついた。
2015.04.25
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