幽霊船に乗り込んで、私と腕を組むようにして隣に立つ透明人間の仮装をした彼と歩く。念のため極力一緒に行動していろ、と言われたからである。私も彼も仮装の役上喋れないからやりとりは携帯でだったりジェスチャーになってしまうけれど。
有希子さんが一緒のほうがいいんじゃないか、とも言ったのだけれど、何かあったときに男のほうが護れるから、とのことだ。
余談ではあるけれど、私が仮装したのはセイレーン。海で航行中の人を惑わして遭難させたり難破させたりする生き物だ。尾ひれを思わせるマーメイドドレスにウェーブを描いた長い髪には貝殻の髪飾り。頬や腕には有希子さんの手によって人魚である証のように鱗が描かれている。
――どう思っとる?この船内。
携帯の画面に表示される文字は、透明人間に扮した工藤新一…に、扮した服部君から送られたもの。パッと見はただ仮装の出来栄えをみるように見えるけど。そう返して送れば、包帯の下で彼が孤を描いた気がした。
私が貰ったカードは、XVのTHE DEVIL。カードのメンバーは7人の筈。私がこれを持っている、ということは誰かが原作のメンバーから外れた、ということなのだろうか。
『オオオ…。冥府魔道をさまよう禍々しき怪物共よ…』
辺りに、亡霊船長の声が響く。くい、と彼の袖を引っ張れば彼は一度私を見た後に自分のカードを見て、亡霊船長を見る。亡霊船長によれば、同じカードを持っている人間は7人。やっぱり、原作のメンバーの中から誰か1人が弾かれてしまったということなのだろう。
(何か、これによって変なことにならなければいいんだけど…)
ここでの出来事よりも、主にベルモット側の方でだけれど。小さく息を吐いて、服部君と共に同じカードの同士を探すことにした。
+ + +
「おお、七人そろいましたな…」
カードを見せ合いながら、毛利さんが呟く。どうやらいないのはフランケンさんらしい。いない、といっても別のチームにいるのを見かけたから多分物語に支障はないだろう。
私の隣で鈴木さんと服部君が握手をして、手はそのままに手首の包帯だけを外す。そこには何もない空洞で、彼が透明人間の仮装をしていることを示していた。
「えーっと、じゃあ貴方は?」
「……………」
毛利さんに尋ねられたけれど、仮装しているものがものなだけにしゃべることが許されない私。服部君に助けを求めようと思ったけれども、そもそも彼も透明人間で喋ることが許されない。なんで喋れない2人を一緒にしたんだよ工藤君!と叫びたくなったけど叫ぶわけにもいかず。どうしたものかと狼狽えていると鈴木さんの後ろにいた有希子さんが口角を上げた。
「セイレーン…」
「え?」
「海で航行中の人を惑わし、遭難や難破させたりする空想上の生き物…。違ったかしら?」
有希子さんの声に、首を横にふる。今ほど有希子さんがいてくれて感謝したことはないかもしれない。とりあえず全員揃ってみんなの仮装がわかったところで、あとは周りがチームごとに別れるのを待つだけである。
ただ、鈴木さんは私のことが気になるようでじぃ、っと私を見つめたままだ。
「…貴方、もしかして」
少し驚いたように、鈴木さんが私に話し掛けた。服部君と違って顔が分かる私に、すぐに気付いたらしい。さすがにこればっかりは誤魔化しようがない。観念して、小さく息を吐く。口止めさえしておけば、問題はないだろう。
口角を上げて、人差し指を口に当てる。シーッ、と小さく漏らせば、彼女はそれだけで理解してくれたらしくコクコクと頷いてくれた。多分、気になることがあれば学校で聞かれるのだろうけれどその時はその時だ。
――バレとるやんか。
ポケットの中で振動した携帯を開けば、服部君が面白げに一言だけ送ってきた。隣にいる彼を軽くバシリと叩けばなんてこと無い顔をして立っている。そういうところは、工藤君っぽい。
服部君みたいに顔隠してないからね。そんな文章を返して、ポケットに携帯電話を戻した。
2015.07.04
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