「ベルモットだとォ!?」
毛利さんの声が響く。狼男さんは少し俯いて、しょぼくれたようだった。
「そいつに頼まれて、この殺人をやったっていうのか?」
「い、いや……。福浦さんを恨みに思っていたのは確かだよ……。死ぬほど好きだった映画『仏滅シリーズ』をあっけなく完結させて…この子供だましの亡霊船長シリーズを始めやがったあの男を……」
このニュースが世に出回ったとき。たかがこれぐらいのことで、と思うかもしれない。でも、彼からしたらこのことはされどこれぐらいのことだったのだろうか。
狼男さんはそのことをインターネットサイトのとある殺人サイトに書き込んだらしい。そしてベルモットという人がその話に乗ってきた。殺害方法も凶器もこっちで用意する、だなんてそれこそ狂気の沙汰だろうが。
勿論、この狼男さんも最初は断っていた。けれども、その後ダンボール一箱分に狼男さんを始めとする家族等を隠し録りした写真、電話の盗聴テープ、日常の行動が綿密に書かれた書類が詰められて贈られてきたらしい。
(この事件をここで起こして、それを解決させるということまでベルモットの筋書きだったってわけね……)
最初に殺してやりたいって書いた彼も悪いのだろうけれど、どんな理由であろうと人を殺めたのは犯罪だ。話は警察に行ってからたっぷりな、という毛利さんの言葉の後に、今度は事件を解いた彼の方へと視線が移される。
「でも、こんな短時間で事件を解決しちゃうなんて!」
「さすが工藤新一!」
「お見事!」
拍手とともに、彼を賞賛する言葉が並べられる。そんなことよりも私は下にいるモフモフした怪物が気になっているのだろうけれどそれをここで言ったら雰囲気を崩すことになるのだろうと少し名残惜しい気もしながら諦める。
私の隣に立つ彼は、なれたようにすぐに解けたのは僕も犯人と同じトリックを使っていたからだと言葉を述べた。
「は、犯人と同じトリックを使ってた?」
「犯人は二重に仮装をさせてたんだぞ!!お前、包帯しか巻いてなかったじゃねーか!」
包帯しか巻いてなかった。それは、彼がまだ1つ目の変装しか解いていないということだ。
変装を解くために、包帯を巻いた手で首筋に触れた。
「こういうこっちゃ!!」
「お、お前は…服部平次!?」
月夜の下に、工藤君の顔の下にあった服部君の顔が晒される。甲板では、誰も予想していなかったであろう出来事にざわざわと騒ぎ始める。
それもそうだ。服部君の前回の変装とは違って、今回は声も口調も全て服部君のものではなくて工藤新一本人のもの。遠く離れた工藤君と、マイクとスピーカーを通してやり取りしているものだ。
「だいたい何でお前が工藤新一に変装しなきゃいけねーんだ?」
「あ――スマンスマン!工藤の奴、最近全然顔見せへんからさみしなってなァ…。アイツの振りして推理かましたら出てきよるかもしれへん思てたんやけど…やっぱり噂通り死んでしもたんやろか?」
指に付けたマイクは、既に切ってあるのだろうか。切っていなかったらその言葉は工藤君には丸聞こえなのだけれど。まぁ知らない振りをした、の一言で片付けられるかも知れないが。
ちらりとウォッカの様子を見れば、案の定電話をしている。私の記憶が正しければ、その相手はジンだ。
「――ったく、お前二度目だろーが!」
「蘭がいたらブッ飛ばされているわよ!」
確かに毛利さん…私と同級生の方の毛利さんがいたらその可能性は高かったかもしれない。いなくてよかった、と思いつつ騒動が一息ついたのを見て、私は服部君に視線を移す。
「ねぇ…」
「何や?」
「確か服部君、バイクの運転出来たよね?」
「そりゃあ、持っとるぐらいやし…」
「…お願いが、あるの」
2015.10.08
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