Marguerite

隠れる彼女、笑う私

 
「え、捕まったんですか?」
「らしいぞ。今朝ニュースで流れていた」
「へー…」

朝になって、秀一さんが家に来て学校まで送っていくとのことで素直に甘えることにした。車の中で秀一さんに言われた言葉に、確かにあの事件はスピード解決だったな、と思いながら何かお礼をした方がいいかもしれないと考える。一応私を刺した人を捕まえてもらったのだし。

「変なことして、傷口開かせるなよ」
「…気を付けます」

体育が無いのが救いだろうか。秀一さんが、学校の近くに車を停めた。私がシートベルトを外して車を降りようとすると名前を呼んで私を引き止める。何かあっただろうか、と振り向けば、目の前に秀一さんの顔。その顔はすぐに離れて、驚いて固まる私を見てフッと笑う。

「そんなに驚くことでもないだろう」
「や、いきなりは、驚きます…」

くしゃくしゃと頭を撫でられて、私の頬が緩む。行ってきます、と言って、私は車を後にした。

 + + +

(3人組はヤイバーお菓子でいいとして、コナン君と哀ちゃんは何にしよう…)

中身は二人とも高校生だ。コナン君にならヤイバー関係のお菓子でも笑いは取れるかもしれないけど哀ちゃんには駄目だろう。ただでさえ哀ちゃんには警戒されているのにこれ以上警戒させたら多分もう仲良くなれないだろう。まぁその時はその時なのだけれど。

(そういえばコナン君ってこの事件の少し後ぐらいに推理小説買ってたっけ?)

で、買ったはいいものの服部君と和葉ちゃん来て読めなくなるんだった気がする。けれど本を買う予定があるなら無難に図書カードとかでいいだろうか。哀ちゃんも雑誌読んでいること多いし。
米花小学校に行く途中に、確か本屋さんがあったはずだ。コナン君に昼間のうちに連絡を入れておいたから、引き止めておいてはくれるだろう。本屋に図書カードが置いてあることを祈りつつ、脚をそちらに向けて動かした。

 + + +

「コナン君見ーつけた」
「見つけたってかくれんぼじゃねぇんだから…」
「童心に返ることは大切よ?」

彼の場合、無理矢理戻らされていることもあるけれどそこには触れないでおこう。それで、俺らに用ってなんだよ、と猫かぶり忘れてますよと言いたくなるような口調で私に言った。

「ほら、私通り魔に刺されたでしょ?捜査に協力してくれたみたいだからそのお礼」

そっちの女の子は、襲われかけて怖い思いさせちゃったから。そういえば、私の事が気になっていたのかチラチラ見ていた歩美ちゃんが顔を上げる。

「別に襲われたのはお前のせいじゃねぇだろ」
「やー…私が咄嗟に護身術で相手ぶっ飛ばしてればよかったんだけどねぇ…」
「何か習ってたのか?」
「ん、ちょっとね。知り合いから教えて貰った程度だけど」

私のことをさっきから見ている少年探偵団の彼らを見て笑みを浮かべれば、三人が笑みを浮かべる。なんかこう警戒してる雰囲気が可愛い。哀ちゃんはまだ警戒しているっぽいけれど性格を考えたら仕方が無いだろう。

「お嬢ちゃん、お名前は?」
「私、吉田歩美!お姉さん、腕は大丈夫?」
「大丈夫。心配してくれてありがとう。傷は思ったより深く無かったから、すぐに治るよ」

ニコリと彼女に視線を合わせて笑えば、彼女は笑みを浮かべる。うん、女の子は無条件で可愛い。光彦君が惚れるのも無理ないわ。高校生になった彼らがどうなるか今から楽しみである。

「はいコレ。怖かったはずなのに捜査に協力してくれたみたいだから、そのお礼」
「わー!仮面ヤイバーだ!」
「君たちも、捜査に協力してくれたって聞いたから」

元太君と光彦君に同じようにラッピングされた袋を差し出す。中には仮面ヤイバーの食玩とかそういうやつだ。2人はそれを受け取れば、嬉しそうにお礼を私に言った。うん、君たち安いね。

「コナン君と、灰原さん、だっけ?君たちにはこっち」
「商品券、か?」
「残念図書カード。どうせコナン君は今度発売のやつ買うんでしょ?」
「ハハ…」

図書カードを受け取って苦笑いをするコナン君に対して、哀ちゃんは不思議そうに私を見る。警戒は、前よりかはされていないと思っていいのだろうか。
歩美ちゃんを中心に少年探偵団のコたちらと他愛もない話をしていると、コナン君と哀ちゃんが話す。コナン君は私のことを知っている。勿論、異世界から来たとかそういうことは知らないけれど。けれど、私がジンに狙われていることやFBIの人たちに匿われるような生活をしていることは知っている。だから、コナン君が私を疑ってくることはほぼ無いだろう。
日が沈み始めて、そろそろ帰らないと、という子どもたちの発言で解散となる。けれど、コナン君と哀ちゃんは動こうとする気配は無い。その行動に、少しだけ口角を上げて二人の方を振り向く。

「少し、カフェにでも寄って帰ろうか?」
 
2015.12.23
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