前に通りかかって気になっていたカフェに入る。小学生2人と高校生1人はちょっと妙な組み合わせなのかもしれないけれど、席へと案内した店員さんは笑顔のままだった。
デザートでも飲み物でも好きなの注文していいよ、と2人にメニューを広げれば、特に2人は食べ物を食べるつもりは無いらしく飲み物の欄を見て各々適当に決める。
タイミングよく店員さんが注文を取りに来て、2人がコレが無難とでも言うようにコーヒーを注文する。そんなことをされたらキャラメルラテとか注文しにくいじゃないか、と若干思ったけれど、飲みたいので容赦なく注文をした。うん、飲みたいものは飲みたい。
「…で、2人は私に何が聞きたい?」
店員さんがいなくなった後に、私が尋ねる。どっちかというと、聞きたいことがあるのは哀ちゃんだろうけれど。コナン君はついでに詳しく聞いておこうという程度だろうか。
「……貴方、結局何者なの?」
「あれ、コナン君から聞いてない?もしかしたら、工藤君って言った方がいいかもしれないけど」
「別に呼びやすいほうでいいだろ」
「じゃあとりあえずコナン君で。人目があるかもしれないしね」
変に工藤君とか呼んでいるのを見られたらまずい人だっているだろう。毛利さんとか。ただ、家のことをしている彼女が忙しい夕方にこういうところに現れるとは思えないけれど。
「まぁ、言ってしまえばジンに狙われてるって感じかな?売り言葉に買い言葉に喧嘩吹っかけちゃって」
「………呆れるわ」
「やっぱり?でもまぁ、助けたい人がね、いたの。私が危なくなっても」
「助けたい、人?」
貴方も組織に関わっていたの?と、哀ちゃんが私に心当たりがないけれど、というように言った。けれど、それは違う。
多分、私が彼女を助けたいと思ったのは、今思えば私自身の為でもあったんじゃないかと思う。きっと、その薄汚い感情に気付きたくなくて、蓋をしていたけれど。彼女が生きてさえいてくれれば、きっと、私と言う存在が秀一さんの中に残るから。とても、汚い感情。
「雅美さん…は、偽名だっけ。明美さん、知ってるよね?」
「お、姉ちゃん…を?」
「…きっと、貴方が思うような綺麗な感情で助けようと思ったわけじゃない。ただ、自分の為に彼女を助けたかった」
それでも、貴方は聞きたい?
彼女は、すべてを聞くつもりでここに来たのだろう。真っ直ぐと私を見て、コクリと頷いた。
+ + +
(コナン君いた意味あったのかなー…)
全て…と言ってもコナン君と同じように異世界から来たことだけを伏せて、ほぼ全てを話した。少しだけ、嘘を交えて。嘘でも、ないような気がするけれど。
私が諸星大を好きで、彼女がもし組織に殺されたら、彼が悲しむこと。彼の為、というそれらしい理由で、明美さんを助けようとしたこと。彼に悲しい思いをさせたくないという、都合の良すぎる理由。
一度認めてしまえば、それはすとん、と私の中に落ちてくる。
(疑いは、どうなのかな)
もうあまり疑われてなければいいけれど、それも都合の良すぎる考え方だろうか。哀ちゃんからすれば、私が明美さんを助けようとした理由だって虫のいい話だろう。それに、明美さんは結局助かってはいない。
もし今ここに彼女がいたら、違う未来だっただろうか。明美さんが、秀一さんへ送ったメール。組織を抜けたら、今度はちゃんと恋人として付き合ってくれるかどうかを尋ねるメール。きっとそれは、まだ秀一さんの携帯の中には残っている。もし私がこの世界にいなくて、彼女が生きていたのなら。秀一さんは明美さんの手を取るのだろう。彼が彼女を好きなことぐらい、何度も何度も原作を読み返したからこそ分かる。
「敵わない、なぁ……」
少しだけ残っていた水分を飲み干して、小さく呟く。
私に、秀一さんと明美さんの2人が一緒にいることに耐えられる自信は無い。2人を応援してあげたいのに、湧き出てくる汚い感情。その感情に蓋をするように、首にぶら下がる指輪を握りしめた。
2015.12.27
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