一夜限りのシンデレラ

快楽に溺れる午前2時

 
「っ、ん……――は、」

真っ白なシーツの上に組み敷かれて、熱っぽく口付けをされる。コレが恋人なら恥じらいをもって望むのけれど、今日の相手は違う。お互いに割り切った、一夜だけの関係だ。

「シャワーは、どうしますか?」
「もう組み敷いているのに、訊いてくるのね」
「女性は気にするかと思いまして」

入るなり早々に組み敷いておいてよく言うものだ。どうせ、一夜だけの関係。今更起き上がるのは面倒で、私を押し倒している彼にそのまま行為の続行を促すかのように触れるだけのキスをする。

「文句は、受け付けませんよ」
「ここまで来といて何を今更」
「……そうですか」

フッ、と笑った彼は、私の両腕を頭の上で押さえつけて口付ける。酸素を求めて薄く開いた唇から歯列をなぞるように舌を絡ませ、角度を変えていく。私もそれに答えるように舌を絡ませて、身体は徐々に熱を帯びていった。
彼は離れ際に私の唇を一度舌でなぞって、そのまま首筋を舐めながら手は服の中へと侵入してくる。

「優しくされるのと、激しくされるの…どちらがいいですか?」

熱を帯びたその声に何故か胸がとても締め付けられるような気持ちになって、彼の背に腕を回して服を握る。

「何も考えられないぐらい…ぐちゃぐちゃにしてよ」

こぼれ落ちた涙が頬を伝う。コレは、きっと秀一への罪悪感だ。彼を想いながら別の人に抱かれることへの、罪悪感。向こうで彼に会ったら、怒られるのだろうか。でも、今はそんなことすら忘れてしまいたくて。

「貴方の手で……秀一のこと、忘れさせて」

私を誘ったのは、暗闇へと引きずり込んだのは、彼だ。ならばせめて彼の手で、一時でも秀一のことを忘れてしまいたかった。
すがりつくように彼の服を強く握りしめたことに気付いたのか気付いてないのか、まるで子供をなだめるように彼は額へとキスをする。

「わかりました。その代わり、嫌だなんて言われても止めませんよ」

彼が言葉を言い終わるのと同時に、私の腕は頭の上で押さえつけられた。

 + + +

「――っ、は…ぁ……あっ、」

後ろから、彼が私を攻め立てる。内壁を突き上げて、胸を揉みしだいて。たまに心地いい痛みを感じる背中は、彼の痕が残されているのだろう。

「アリシア……」

耳元で、熱を持った声で私を呼ぶ。すでに数回私の中で熱を放っているのに、止める様子は無くて。かくいう私ももう何回果てたのか分からなくなっていた。忘れさせる、と言った言葉は本当にその通りで、お互いがお互いにひたすらに快楽を求める。

「あ、やっ……また、ぁ…んんっ」
「――っ、」

私の上で、彼が息を呑むのが分かった。それと同時に、首筋に鈍い痛み。キスマークではなくて、ソレは恐らく歯型。獲物を捕らえた獅子のように、私の首筋に噛み付いた。
下腹部からの圧迫感で苦しくて、でも、もっとして欲しいとも思ってしまって。首筋の鈍い痛みも今はただの快楽で。
時折意地悪く焦らすように私を攻め立てる彼の愛撫は、忘れてしまいたい彼を思い出させる。けれど、思い出すのと同時に塗り消すかのように弱いところを突いて。

「あ、んっ…っ、やぁ…あ」

私の甘い声だけが、部屋に響く。引きぬかれて、押し込まれて、不規則なソレに合わせて漏れる声は確かに自分自身の声なのに、自分の声じゃないみたいだ。
迫り来る快楽に身を委ねて、シーツを握りしめた。腰を押さえつけられて、無意識に逃げようとする身体を抑えこまれる。そのまま弱いところを数度突き上げ――。

「―――っ、」
「っ、」

どくり、と脈を打って、彼のものが私の中で熱を放つ。もう何度目になるのかさえ分からないその熱は受け止められなくて、彼のものが引き抜かれるのと同時にシーツを汚す。
ふいに彼が私の足を掴んで開かされる。同時に、私の体は反転して仰向けになった。正常位になった体の上に、覆い被さる。

「案外、体力あるのね」
「そうでなきゃ、誘いませんよ」

果たして目の前の彼は私を寝かせるつもりがあるのだろうか。そんなことを思いながら彼の首に腕を回した。

- 4 -
back  next