Marguerite movie

クレーン車と観覧車

 
アクセルを踏み込んで、壁をぶち破る。久しぶりに運転する感覚に少しだけ変な感じがするけれど、時期になれるだろう。風見さんと電話をしているときに背後から聞こえてきていた銃声は、今は聞こえない。

(大丈夫、コレなら間に合う…!!)

真っ暗で空にジンたちがいるのかは私からは分からない。けれど、まだ終わりじゃないことだけは分かる。辺りには人がいないことをいいことにいい気にスタジアム前に向かうか、と思った瞬間。

「きゃっ……!」

突然の、明るい光。一瞬だけ身構えて空を見上げれば出来ることならこんな形で見たくはなかった花火。あぁ、もうホントに時間がないじゃないか。
気持ちを切り替えて、私はアクセルを踏み込む。緊急時だから、安全運転なんて言っていられない。最低限人がいないということだけを確認して物がぶつかることも気にせずドームへと向かう。

「っ、チッ……」

激しい騒音と、地響き。観覧車が、動き始めていた。まだゆっくりと動く観覧車は後に加速する。

「運転変わるわ」
「っ、ダメ!!貴方、死にたいの!?」

突然の声に、息を飲む。走らせているクレーン車の扉を開けて、扉の所に立つキュラソー。そのお腹には、観覧車の内部で刺さったのであろうボルト。手には、白いイルカのキーホルダー。

「子どもたちと、約束したんでしょう!?また観覧車に乗るって!!」
「大丈夫、死ぬつもりは無いわ」
「きゃっ…!!」

キュラソーが軽々と私の身体を掴んで、私を扉のところに立たせてキュラソーが運転席に座る。ホントにお腹にボルトが刺さってるのかこの人は、という動きに一瞬だけ関心するけれど、そんなことをしてる場合じゃない。

「貴方正気!?お腹にボルト刺さってるんですよ!?」
「正気よ。こうでもしないと、あの観覧車は止まらない」

私以上に荒い運転に、座席を掴む。キュラソーが運転するのなら、圧迫止血は出来ない。そもそも、圧迫止血は素人には向いていない。傷口を損傷させる可能性もあるし、今以上に悪化させる可能性だってある。
携帯を取り出して、緊急通報用の番号を押す。出血を多くしているわけではないように見えるけど、彼女のお腹は貫通している。

「少し、揺れるわよ…!」
「大丈夫です!」

加速をした観覧車が、スタジアムへと向かう。一気にクレーン車のアクセルが踏まれるのを感じながら、電話先に場所と状態を告げる。支給向かいます、ということを言われて息を吐き、キュラソーを見る。

(ギリギリで彼女の腕を掴んで飛び降りれば、いける筈…)

携帯をポケットに入れて、開いたままになっている扉を確認する。私が扉を締めない限りこの扉は開かれたままだし、彼女の腕を掴んでクレーン車から離れるのは難しいことじゃない。本当なら、私がギリギリまでクレーン車を運転したかったのだけれども。

「サッカーボール…!」

観覧車から膨らむ、サッカーボール。そこに、コナン君がいるのだろう。刹那、クレーン車に大きな衝撃が走る。それは観覧車とクレーン車がぶつかったことによるもの。

「お願い、止まって…!」
「止まれぇえええ!!」

アクセルを思いっきり踏んだことによる、エンジン音。クレーン車の重みと力で、ほんのわずかに観覧車の軌道がそれる。そのとき、クレーン車と観覧車がぶつかり合う音の中に違う音の中に、ミシリというクレーン車が悲鳴を上げる音がした。

(これ以上は…!!)

幸か不幸か、観覧車の軌道はズレている。それならば、とキュラソーの腕を掴む。

「貴方、何を…!」

バッ、と腕を掴んだまま、クレーン車から飛び降りる。私が腕を掴んだことによって同様したキュラソーは、そのまま落ちるようにクレーン車から引きずり出される。その瞬間、だった。観覧車が、目の前でクレーン車を轢き潰したのは。

「っ、は……危なっ…」
「どうして…」
「喋らないで!」

驚いたように私を見るキュラソーに言う。観覧車はなんとか止まったけれど、彼女の傷が塞がったわけじゃない。彼女の身体は、まだ鉄柱が貫通したままだ。

「もしも貴方が組織に戻らないというのなら…私の独り言でも聞いてて、」

イチかバチか、圧迫止血でも何でもするしかない。ただでさえ鉄柱が刺さったまま観覧車からクレーン車まで移動している彼女の体力はそれだけ落ちている。血も、結構流れ出ただろう。
彼女の腹部を圧迫止血する為、胸元のスカーフを外した。

2016.07.05
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