Marguerite movie

取引を行う

 
物陰に隠れて、追ってくる足音が聞こえないのを確認して息を吐く。さすがジンと共にいるだけはある、ということだろうか。ウォッカはガタイがいいわりに走るのが早いらしい。

(体力、もう少しつけたほうがいいかな……)

部活動をしてないわりにはある方だと思ってはいたけれど、さすがに今回の鬼ごっこはきつかった。捕まったら殺されるかもしれない、という緊迫感もあったのだろうけれど。
暫く物陰に身を潜めていると、遠くから車の音がした。恐らくジンたちなのだろう。これで、さっきの倉庫に奴らはいない。念のため銃を手に持ったまま、倉庫へと戻る。

(水無さんは、いると思うけど)

安室さんも倉庫の中にいるのだろうか。開いたままになっている扉から中を覗けば、柱に後ろ手で手錠をかけられた状態のままその場にいた。安室さんの姿は、見えない。

「うわっ……腕、大丈夫ですか?」
「貴方……」
「えーっと…。どこまで話していいのかわからないのでちょっと説明省きます。うん、私手錠外すのはさすがに出来ないので止血しますね」

ポケットに入れていたハンカチを取り出して、水無さんの腕を止血する。うん、痛そう。秀一さんも彼女が怪我をする前にライトを落とせば良かっただろうに、と思ってももう遅い。ひとまず止血を終えると、小さく彼女からお礼を言われた。

「さて、と。安室さーん。いますー?」
「……ライトを落としたのは、貴方ですか?」
「残念ながら私にそんな技術ありません」

両手を上げて、物陰から両手を上げながら安室さんが出てくる。彼は私が敵ではないと知っている筈だけれど、念のためなのだろうか。辺りをざっと見回しても組織の人間がいる気配はない。

「東都水族館、行くんですよね?車だと組織の人間にマークされるかもしれないと思ったから協力しようかと」
「赤井の恋人である貴方が、何故?」
「秀一さんに今まで散々蚊帳の外にされてるからこっちだって黙ってられるかっていう嫌がらせです」

なんだかんだでいつもいるじゃないですか、なんて声が聞こえたので何か言いました?と返せば彼は笑顔でいえ別に、と言った。私と安室さんがそんな話をしている間にも水無さんはヘアピンで手錠を外すことに成功したらしく、安堵からか小さく息を吐いていた。

「それで、どうします?組織にマークされる可能性のあるRX-7か、それなりに距離があるけれど徒歩か、私に少しだけ協力してもらうことになるけれど私に乗せてもらうか」
「先に、その協力とやらを聞いても?」
「えぇ、構いませんよ」

そんな大したことではないですけど。そう言って、私は彼にそれを告げた。

 + + +

「そういえば安室さん、携帯持ってます?」
「いえ。車に置き去りですよ」
「でしょうね。じゃあ、ハイ。公安の人に電話することもあると思うので私の携帯渡しておきます。あ、でもかけるときは非通知にしてくださいよ。後々かけ直されても困るんで」
「じゃあ、有りがたくお借りしておきます」

安室さんにヘルメットを渡しながら、一緒に私の携帯も渡す。映画では公衆電話から電話をしていたけれど、携帯からの方が移動しながら出来る分便利だろう。公衆電話から電話をしていたのだから、番号は覚えているのだろうし。
バイクに跨って、エンジンをかける。安室さんがお邪魔します、と言ってヘルメットを被りながら私の後ろに座る。

「セクハラとか言わないんで、ちゃんと掴まっててくださいね」
「どこを触っても、ですか?」
「ちょっと海に突き落としてもいいですか?」

冗談ですよ、と大人しく安室さんが私のお腹に掴まる。そこで肉を掴んできたら本気で振り落とそうかとも考えるけど普通にされているだけなので大人しくバイクを走らせた。

2016.04.24
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