とりあえず全てのポジション試してみようと吹っ切れた私は結果的に、狙撃手よりも攻撃手よりも射撃手よりも、銃撃手向きだった。
狙撃手で鍛えた狙撃スキルと、反射神経の良さが合ってると思うと言った東さんの言葉通りめきめきとポイントを稼ぎ始めた私を目ざとく見つけた太刀川さんにランク戦ブースへ引き摺られたのはつい最近の話。
まだまだ課題は山積みで、けれど前よりちょっぴり前向きに考えられるようになったのは、あの桃キャンディのおかげだと思う。

アドバイスとキャンディをくれた影浦くんとはあれから話す機会が増えたかと言うとそうでもなく、同い年の倫ちゃんや柚宇ちゃんから北添くんとの拳での語り合いの話を聞いて、やっぱり桃のキャンディはないだろと、その似合わなさにまた笑ってしまった。

そんなこんなでスランプを無事ぬけだし、銃撃手としての成長が自分でも分かるぐらいに伸び伸びした私は、
「最近調子よさそうだねえ太陽ちゃん」
なんて、迅さんから声をかけられるぐらいに浮き足立っていた理由がもうひとつあった。

「太陽!」
「わー!てっちゃん…ほんとにボーダーに居る…!」
「お前またそれか、いい加減なれろよ。」
「ええ、だって…最初は同い年居なかったのに、ちょっとずつ増えてきたなあと思ったらてっちゃんまで来てくれたんだもん…!てっちゃんがボーダーの隊服着てるの見ると嬉しくて!」

なんだよソレ、と笑う彼はまだC級の隊服で、それでも私にとっては十分嬉しいことだった。

「荒船ー、正隊員ナンパしてんのー?」
「やるな荒船、意外と。」
「ちげえ、幼なじみだ。太陽、こいつらもこないだ入隊したんだ。当真と穂刈。俺達と同い年。」
「「どうぞよろしく。」」
「芳乃太陽です。こちらこそよろしくね。」

幼なじみが連れてきた友達二人と挨拶を交わして、個人ランク戦ブースへと移動した。三人はもう少しで4000ptを越えるらしく、今日も個人ランク戦や合同訓練に顔を出してたとか。
残念ながら哲次は攻撃手だし、彼が連れてきた当真くんと穂刈くんも狙撃手なのでポジションは違うけれど、私が元狙撃手なんだと話たら二人じゃなくて哲次に驚かれた。

「お前直ぐ焦るから、狙撃手は一番向いてねえだろ。」
「…てっちゃん、なんでもっと早く入隊してくれなかったの?」

私の幼なじみの方が、私を良く知っていたようだ。



◆ ◇ ◆



「あ、太陽さーん。」
「出水くん、ランク戦してたの?」
「そー、太刀川さんに捕まっちゃって。でも途中で風間さんに引きずられてったけどね。」
「…太刀川さんいい加減学習すればいいのに…」
「それが出来たら風間さんに引きずられてかないよ」

手にしたジュースを飲みながら笑った出水くんの正面に腰を下ろしてモニターを覗けば、丁度終了したところらしく、エリアに人影は見えなかった。

「さっきまで影浦さんと北添さんがバトってたんだよ。ほら、ブースから出てきた。」

出水くんの指さした先から来た二人は何故か生身が傷だらけで、同級生が噂していた殴り合いは結構本気でやってるんだと少しわらってしまった。

「…くすぐってえからヤメロ。」
「!見すぎちゃったね、ごめん。」
「芳乃ちゃんやっほー。」
「北添くんこんにちは。」

挨拶を交わしてすぐ、北添くんは観戦していた出水くんと今の戦いについて話始めてしまった。残った影浦くんは、ふたりの邪魔にならないようにか、私の隣に腰をおろして大きなあくびを溢していた。

「キャンディありがとう…って、言ってなかったよね。」
「…いいわ別に。家のだし。」

あまりにもそっけない返事に、やっぱり桃味のキャンディなんて似合ってないなあなんて思わず小さくわらってしまった。噂のSEはそんな私の感情をしっかり拾ってしまったらしく、ギロリと睨んだ影浦くんは、すぐに小さくため息をついた。

「銃撃手にしたんだな。」
「うん、少し迷走してたりしたけど…銃撃手が戦ってて一番楽しいから。」
「…二度は言わねえ。」

そっちの顔のがあってる、と言われるなんて思っていなくて、思わず呆けてしまった。
動きの止まった私の額に外見からは想像できないほど優しいデコピンを当てて振り返って行ってしまった猫背気味な影浦くんは、耳の先がほんのり赤くなっていた。

そっけない背中