「王弟君と竭氏の反乱にご協力されると仰いましたか」
「ええ。そして、貴女にも任せたい事があります」
王騎様のお考えを間違いだと思った事は今まで一度もない。ただ、今回はあまりにも事が大き過ぎた。何が正しくて何が間違いなのか、私如きでは答えなど出せるはずもない。そのような私の頭の中など全て見透かしたように、王騎様は胸を張って、安心しなさいと笑うのだ。
「分かりました、王騎様がそう仰るのならば何か考えがお有りなのですね。ならば私も腹を括ります」
「フフ、頼もしいですね。後できちんと目的も説明しますよ」
反乱の決行は近々。竭氏には反乱に協力する旨を伝えているので日程が決まればあちらも使者を寄越すだろうという事、また、大王様の側近である昌文君が来る反乱に向けて準備を進めている事、そして昌文君は竭氏や王弟君の知らない大王様の身代わりを用意している事を聞き、私は首を傾げた。
「身代わりの事を竭氏にはお伝えしないのですか」
「ええ、教えません」
その答えを受け、私はやっと王騎様の御考えが少し分かった気がした。王騎様の目的はこの反乱を成功させる事ではない、呂氏の天下である大王様の時代を終わらせるのが本心ではないのだ。先程から握り込んでいた拳を開く、少し汗をかいていた。
私の表情の変化を見て、王騎様は口角を上げた。
「貴女相手にほとんど説明はいらないようですねェ」
「ですが、王騎様の本当の目的は見えぬままです」
「今の世はつまらない、それを変えるために動くだけですよ」
動いた先に、王騎様がもう一度羽ばたける空はあるのだろうか。私はまた、王騎様の翼を見る事が出来るのだろうか。
「ならば私は為すべきことを為すだけです」
王騎さまのお役に立ちたくてあらゆる事を学んだ、それを活かす機会がやっと巡ってきた。何も迷わなくていい、王騎様の道が私の道なのだ。
「昌文君の動きは大方予想が出来ます。こちらは私が相手を。貴方には大王の身代わりの任せたい」
王騎様が咸陽周辺の地図を広げ、幾つか駒を配置して話を進めていく。大王様は確かまだ十四、五歳のはず、その身代わりという事は同い歳位の少年だろう。こんな事に巻き込まれるなんて気の毒だ。私とそれほど歳の違わない、見た事もない少年の境遇に少し心が痛んだ。
「後で昌文君と合流させる為に、身代わりを殺さず逃がして下さい」
「かしこまりました」
「騰を後ろに置くので大丈夫だとは思いますが、危なくなれば離脱するのですよ」
「はい」
殺さず逃がす、昌文君も身代わりも。そうなれば王弟君の反乱は完全には成立しない。その後はどうなる、呂氏は大王様はこの国は、どこに向かって転がるのだろう。