突然途切れた言葉と共にこの部屋の空気も止まってしまったようだった。
勘は良い方だと自負している。
殿のお役に立ちたいとそれまで以上に教えを乞うようになった時、晶霞に対して感じた僅かな変化を思い出す。
初めて目の当たりにした戦場から影響を受けたのだろうと思っていた。何事も素直に吸収し、自分のものにする事が出来る晶霞は殿や私が教えれば教えるほど成長する。そのひたむきな姿を見ているうちに、晶霞の感情にも今までと違うものが混ざりはじめたことに気付いた。
尊敬や憧憬、あるいは思慕を込めた眼差しは決まって殿の背に向けられていた。それは私以外の誰もが気付いていないだろう。殿でさえ気付かなくて良いと思っていた。私のこの感情が何に分類されるものなのか、深く考えた事はなかった。
「晶霞」
こういう時、すぐ感情が顔に出る。振り返ると思ったとおり動揺を隠せず青ざめた晶霞と視線がぶつかる。こういうところはずっと変わらない。頭を撫でると何も言わずに大人しくそれを受け入れていた。
「お前はそのままで良い」
僅かな寂しさ、なのかもしれない。私が殿の元についてから、何かと側にいる事が多かった。晶霞が成長するにつれ、少しずつ離れていくような気がしてこんな感傷を抱くのだ。晶霞は私が思っているよりも大人になっていた。顔立ちからは幼さが消え、振る舞いは洗練されていく。いつまでも子供扱いは出来ないな。
私を見上げる美しい瞳が揺れた。
「今の私のままであっても、王騎様や騰様のお側にいても良いですか」
その言葉に胸を突かれる。殿だけでなく私の側にもと考えてくれているのだな、と思うと単純に嬉しかった。晶霞の言葉を理解すると同時に身体が動いていた。抱き寄せた身体は温かく、思ったよりも小さい。大人になりつつあっても女なのだと初めて意識した。
「ああ、ずっとな」
そう返すと腕の中で微かに笑った。
晶霞はこれからも殿の側で麗しく成長していくのだろう。私は近くにいてその成長を見守れたら良いと思うと同時に、いつまで近くにいられるだろうとも思う。殿か、別の誰かかは分からないが、いつか訪れるその時に私はどんな感情を抱くだろう。
ほんの僅か、腕に力が入る。
これが愛しい、か。