摎姉様が亡くなってから二年が経った。だが、未だに王騎様は私を戦場に連れて行っては下さらない。



「騰様からも王騎様に仰っていただけませんか」

「殿には殿の考えがお有りなのだ」


練兵には連れて行って下さるのに。実戦で使えなければ何の意味も無いように思えて、私はいつも不貞腐れていた。
姉様の死は病ではなく、強い武将と戦い、討ち死にしたのだと王騎様は話して下さった。その武将は王騎様が討ち取ったと仰ったが、姉様が負けたという事がにわかには信じられなかった。あんなに強かった姉様が叶わない相手。姉様の命も、お二人の幸せも全て奪った輩に対する悔しさや悲しみは私の中で消化されず渦を巻き、度々兵達と剣をぶつけ合う事でしか発散出来なかった。


「戦神と呼ばれた大王様が床に臥せるとこも多くなった、最近は大きな戦も少ないからな」

「でも騰様は王騎様といつも一緒に戦に行ってらっしゃいます」

「何だ、嫉妬か?」

「ち、違います! ただ、私は王騎様のお役に立ちたい、そして摎姉様と同じ景色が見たいのです」


いつか共に戦おうと約束したから。


「そうか……、お前にも思うところが有るのだな」


騰様はその青い眼差しで私を見やり、大きな手で私の頭を優しく撫でた。それが子供扱いをされているように思えて、不満を隠さず息を吐く。
姉様が亡くなってからは、よく騰様が剣を見て下さっていた。練兵に連れて行っていただけるように王騎様を説得して下さったのも騰様で、とても感謝をしている。だけど時々このような扱いをされるので私は何とも面白くないのであった。


「騰様っ、さぁ今日も稽古をつけて下さい!」


多少驚いたように手を止め、いいだろうとすぐに剣を構えた。私も腰の剣を抜き正眼に構える。
騰様は王騎様と違い、どんなに強く打ち込んでも剣の動きで受け流されてしまう。どういう風に動くのかと聞けば教えてはいただけたが、私には真似出来なかった。
刀刃が何度もぶつかり合い、甲高い金属音が鼓膜に響く。ぐっと脚に力を込め、剣に体重を乗せるがやはり押し込めない。力比べをしても敵わないのですぐに弾き返して切りかかる、


「左が甘い」

「っ……、」


左の胴には騰様の剣がぴたりと添えられる。腕を上げたその一瞬を待ち構えられていたのだ。乱れた息を整えながら頭の中で動きを反芻し、悪いところを考えた。もう同じ失敗はしない。



「とは言え、私とこれほど打ち合える者はそうはいない、強くなったな」

「ありがとうございます!」


少し悔しいと思いながらも、騰様の強さを垣間見れた事で僅かながら近付けた気がしていた。

騰様は剣を鞘に納めるとまた私の頭を撫でようと手を伸ばしたので、後ろに避けて手ぬぐいで汗を拭く。額の汗に気付き別の手ぬぐいを差し上げると、青い目を微かに細めてありがとうと仰った。