「王騎様、お食事の用意が出来ました」

「ありがとう、すぐに行きます」


木簡を眺めていた視線をゆっくりとこちらに向けて王騎様は笑った。


「どうしました」

「え、」

「何か私に話があるのでしょう。顔を見ればわかりますよ」


王騎様は昔から私の顔を見ただけでこのように心を読む。私にその仕組みは分からないが、後にしようと思っていても話を引き出されてしまうのだ。意を決して王騎様の前に立ち腹に力を込めた。


「私も、戦にお供したいのです。王騎様のお役に立ち、恩返しをさせて頂きたいのです」

「貴女が摎の代わりに戦う事はないのですよ」

「私に姉様の代わりが務まるとは思っておりません。ですが……」


夢半ばでどれだけ悔しかった事だろう。私に姉様の代わりは出来ないけれど、少しでも王騎様のお役に立てたらといつも思う。もっともっと強くなれれば、もしかして姉様と同じ景色が見られるかもしれないとも。ならば姉様がそうしたように私も戦いの道を歩みたい。どんなに傷付いたとしても、これ以外に前へ進む道は無い。


「どうか恩返しの機会を。そしてこのような私にも、王騎様のお側で、姉様や王騎様と同じ景色を見る機会をお与え下さい。その為なら血に塗れてでも戦います」


息を吸い、両膝をつき頭を下げた。王騎様が首を縦に振るまで絶対に頭を上げないと地に付けた額にぐっと力を込める。すると上から困ったようなため息が降ってきた。王騎様が私の前にしゃがみ、私の頭に大きな手を置いた。


「いつの間にか、こんなに大きくなっていたのですね」


不思議と王騎様の手から伝わる体温は心地好く、強ばっていた私の身体から少し力が抜けた。


「顔を上げなさい」

「でもっ、」

「晶霞」


有無を言わせぬ強い言葉に恐る恐る顔を上げると優しい顔をした王騎様がいた。たったそれだけの事なのに目には涙が滲んだ。


「貴女が本心で望むなら、私が止める事は出来ません。ですがこれだけは覚えておきなさい、私は貴女をとても大切に思っています。だから心配してしまうのです」

「も、勿体無いお言葉っ」

「戦には連れて行きますが、いくつか約束は守ってもらいますよ」

「は、はい!」


緊張が解けた事で思わず表情が崩れ、涙が零れた。このお方にお仕え出来て良かったと心から思う。これから私は王騎様の盾となり矛となろう。それが出来る強さを身に付け、何があってもお守りしよう。強い覚悟を胸に刻み、もう一度深く頭を下げた。


「ありがとうございます。これからもずっと王騎様のお側でお世話をさせて頂きます」

「こちらこそ頼みましたよ。フフ、続きは食事をしながらにしましょう」

「はい!」

「貴女の料理は美味しいですからねェ」

「恐れ入ります!」